ぐち

モーリスのぐちのネタバレレビュー・内容・結末

モーリス(1987年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

狩猟番のことを最後までメインキャラだと思ってなかったことに私の全ての敗因があると思った…いや完全に私の見方の問題なんだけど…

モーリスと狩猟番に関しては、学生時代の思い出を抱えたまま1人で大人になってしまって拗れた坊ちゃんの童貞処女が一番心が弱ってるときに毛色の変わったのに激しく求められて初体験を捧げてしまい(しかも初恋の相手のいる屋敷でその使用人と)限界まで拗らした、、
っていう身もふたもない見方をしてたのでラストでエッ、あ、そういう!?ってなってしまったのだ…モーリスにとって狩猟番は弱ってるときにコロッといっちゃった一時の相手か、クライヴの身代わりくらいにしか思ってないのかなーって感じて見てたので…まさか真実の愛だったとは。ほんとすまんかった。

せめて狩猟番がもっと序盤で目立っててくれたら…
モーリス視点で見るかクライヴ視点で見るか客観視するかでけっこう見えかた変わりそうな映画…いやタイトル通りモーリス視点にどっぷり浸かって見ろよって話なんだけど。そうじゃないとなかなか作者の意図通りに見れないかも。

でも原作者が「せめてフィクションの中では禁じられた思いが成就してほしい」という願いに貫かれたラストは、作品の書かれた時代背景から考えても切実で切なくて美しい。重要で素晴らしい作品だと思う。
モーリスとクライヴの対比も、自分の気持ちに素直になって思いを貫いたものが幸せを掴むっていうのは夢があるし作者の強い思いを感じる。
同性愛を扱った映画で、悲劇的な結末でもなく矯正された末の『社会的に正しいハッピーエンド』でもなく心中などのメリーバッドエンドでもないというのは、現在の映画と合わせても稀有なのではないだろうか。
彼らの未来は決して明るいだけじゃない。けどもしかしたらあの後上手くいくかもしれない。あそこで終わることで映画としては彼らの関係を肯定しあの時代に出来うる限りのハッピーエンドを用意した。そういう点で力強い意思に満ちた映画だと思う。
庶民から王室にあがったシンデレラはその後幸せになったかはわからない。けど物語はめでたしめでたしで幕を閉じ、読者は希望を胸に抱いて本を閉じる。
そういったお伽話のような印象を受けるラストだった。
ぐち

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