ばーとん

不思議の世界絵図のばーとんのレビュー・感想・評価

不思議の世界絵図(1997年製作の映画)
3.9
前作から5年を経て、シュリーク監督がロードムーヴィーを撮ったというのは、映画監督としての進歩なのだろう。映像作家として、ストーリーテラーとして、特別に傑出した才能を感じるほどではないが、ファンタジックな物語を上手くまとめている。

少女映画というのは撮るのが難しいんだが、これは中々悪くない。行く先々で、男に犯されるのではないか、という予感を散りばめておいて、実際には何事も起きない。と言って、少女が無垢な存在かと言えばそうでもなく、結婚式では若い新郎をあからさまに誘惑する。

母を訪ねて旅するストーリーだが、母親は邪見で再会の感動はない。少女がこの旅でなにを得たかと言うとなにも得ていない。単に学校を追い出されて実家に帰っただけでしかない。旅先で様々な出会いはあるものの、少女にこれといった成長は見られない。そりゃそうだ、実家に帰省するだけで成長できるんだったら人間苦労しない。ラストシーンは何も無い殺風景な世界の果てで老人と佇むのみ。

前作で「旅ほど無意味なことは無い」「旅で体験や知識が深まりはしない」と語っていたが、恐らくその風変りな信念をそのまま映像化したのがコレ。つまりこの映画の本質は、ロードムーヴィーの形式を借りた「アンチ・ロードムーヴィー」ということになる。このひと本当に旅行嫌いなんだろうね。なるほどひねくれている。でもそのひねくれかた嫌いじゃない。
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