せーじ

パーフェクトブルーのせーじのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.2
152本目。
プロフィールにも書いている通り、自分はゴア描写とホラーが心の底から苦手だ。ましてや映画館の様な暗い場所でそれを見るなんて、とても堪えられない。
なので、明らかにそういうものがありそうな作品には最初から絶対に近づかないようにしているのだが、それでもたまに遭遇してしまうことがある。テレビなどで運悪くそういうものに遭遇してしまった時は即刻観るのをやめ、その映像について考えることをやめ、一秒でも早く忘れようと心掛けてきた。

でも、何の気なしに借りたこの作品がそうだったなんて…

とはいえ、アニメーションであるということと、作劇上の価値観や風俗が今となっては完全に過去のものになってしまっているということ、そしてミステリーとして観ると、割と簡単に予測することが出来るオチだったことで、自分の中では最後まである程度は客観的に鑑賞することが出来た。だが、この作品はゴアな描写そのもので恐怖感を煽るというよりも、「姿の見えない誰かの悪意」を前面に出している作品だったので、鑑賞後は後を引く嫌悪感と恐怖感でお腹いっぱいになってしまった。

つくづく、リアルタイムで映画館で観なくて良かったと思う。

また、作画そのものは、今となっては時代を感じさせる拙さがあるのだが、連想させるような繋がりのある映像や、同一構図の作画を効果的に使った映像演出などがものすごく的確で、主人公の混乱に乗じて観ている側をもロジカルに混乱させようとしてくる怖さがある。つまり、この先どうなるのかという「興味の持続」が高い位置でキープされ続けながら、いわゆる「予測可能回避不可能」な作劇を、とても秀逸な映像演出で見せてくるので、オチが読めてもそれで恐怖感が和らぐ訳ではないというのが恐ろしい。加えて、ラストカットでやれやれと思わせた後に、なんとも不気味な要素を叩きつけてくるので、本当に辛かったです…

これを20年以上前にしれっと作っていた今監督って何者なんでしょう。
題材は今でも通用するというより、むしろ今「だから」通用すると言ってもいいかもしれない作品だと思います。
ホラーがお好きな人、サイコサスペンスがお好きな人はぜひ。
なお、アニメーション作品としては、かなり過激なエロ描写&ゴア描写がある作品です。ただし、そういうものがどうでも良く感じられるくらいメインのプロットの語り口が強烈なので、それは大した問題ではないのかもしれません。

今日は電気つけたまま寝よう…
せーじ

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