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お嫁においでの東京キネマのレビュー・感想・評価

お嫁においで(1966年製作の映画)
2.0
同名タイトルソング大ヒット中のメディアミックス・プログラム・ピクチャーと言えば格好良いですが、加山雄三人気にかこつけた黒沢年男&沢井桂子売込み(ねじ込み?)の歌謡青春映画といったところでしょうか。

どうも中途半端な感じがするのは、この時期超絶に可愛い内藤洋子を四枚目まとめ役のヒロインにして、若大将加山雄三と別路線の新しいハッピー・サラリーマン・ライフのキャラクターが作れるという二度とない好機に、こういったある意味ダブル・メインのいい加減な企画でお茶を濁したことでしょう。

それに、この時代の空気感とは言え、お前ら革命でも興すつもりなんかい、と思えるほどのルサンチマンなお話で、これは恐らく松山善三の嗜好性の問題なのでしょうが、ブルジョアと労働者のお話にするのはどう考えても飛び過ぎです。

以下、ネタバレです。





何しろ、主人公の加山雄三は大会社社長の御曹司、相手の恋人(沢井桂子)は貧乏長屋住まいのウェイトレスで、尚かつ、加山雄三が家出までして求婚したというのに、“お金で心は買えるかもしれないけれど、それって人間としてどうなの?”と理由にもならない理由で加山雄三を振り、貧乏男黒沢年男とハッピー・エンディングするという鬼畜なストーリー。

まさしく高峰秀子の髪結い亭主を地でいくお話ではありますが、『お嫁においで』のタイトルであれば期待するストーリーは決まっているでしょうし、可愛い妹が応援する清楚な恋人とのハッピー・ストーリーを期待した観客は大いにズッコケたのではないかと想像します。

それにですよ、加山雄三の音楽史の中でもこの時期は特別で、「お嫁においで」「俺は海の子」「夜空を仰いで」といった名曲を量産していたタイミングにですよ、さもかったるそうにウクレレ1本で適当に音楽シーンを挿入するという無神経な作り方にもため息が出てくるばかりでして、『エレキの若大将』がたった1年前だっつうのに、何なのよこの雲泥の差は、と呆れるばかりです。

たぶん藤本真澄さんも冒険したかったのでしょうが、監督に本多猪四郎(尊敬してますが、企画が違いすぎます)、脚本に松山善三というのはどう考えたってスタッフィングのミスです。そう言えば60年代後半以降、こういったヘッポコ企画を東宝は沢山創っていて、結局1972年に東宝本体は映画製作そのものを止めちゃうという見事なクズっぷりを見せて日本の映画観客を唖然とさせる訳ですから、想定できる範囲内の断末魔と了解すべきお話かも知れません。
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