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決闘者のFilmomoのレビュー・感想・評価

決闘者(1956年製作の映画)
4.5
①平和な町に一人の流れ者がやってくる。そのために町のうわべの平和や人間関係は崩壊し始め、「法と秩序に護られていた町」は「無法地帯」へと変貌してゆくという怖い西部劇。これを見たときに思い出したのはウィリアム・フリードキン監督の『真夜中のパーティー』。ゲイの楽しいパーティーにストレートが一人入って来たために、パーティーはゲイたちのうわべの幸福感を破壊してゆく。これと同じ事がこの映画で起こる。②町の名前がウエスト・エンド、つまり西部の終焉なので製作者の意図は判りやすい。ただ、西部の終焉というと『モンテ・ウォルシュ』や『砂漠の流れ者』『ワイオミング』など哀愁の西部劇が浮かぶが、この映画はそういう寂しさ侘しさを描くのではなく、人間心理の奥底にある本性や暴力性を暴いている。言ってみれば社会派西部劇なのである。実際、松本清張が西部劇のシナリオを書けばこんな感じになっていたかも。③もう一つの側面がキリスト教共同体の在り方である。全編にわたってキリスト教的価値観が根底にある。牧師が登場するが、最初流れ者排斥に煽動に立ち、暴力も厭わない姿勢であったが、改悛し、キリスト教指導者としての言葉に変わる。キリスト教志向性の高い脚本だが、それは象徴的にうまく娯楽的に隠されているので説教されているようには感じない。単なる悪党とヒーローの対決を描くのではなく、闖入者による社会不安をスリリングに描いてるところが面白い。これもB級ウエスタンのように語られるが私には一級品に思える。
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