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25時のFilmomoのレビュー・感想・評価

25時(1967年製作の映画)
4.2
①アンソニー・クインが素晴らしい演技と生命力を見せてくれるアンリ・ヴェルヌイユ監督の戦時下の人間ドラマ。ルーマニア人の一人の平凡な農夫の妻に横恋慕した警察署長の悪意により、ユダヤ人の強制労働所へ送られ、愛妻と離ればなれになり、過酷な労働を強いられる。5か月もの間自分はユダヤ人ではないという訴えを無視され、その上再び警察署長の悪意により妻は強制的に離婚届にサインさせられる。農夫のもとに離婚届が届き、彼は絶望する。そして仲間の手引きで脱走し、ハンガリーへ逃げ延びるが、パスポートを持っていなかったためにスパイ容疑で連行され、今度はドイツへ労働者に化けたスパイとして送り込まれるが、ナチの将校に発見され、優越人種として認められて、今度はナチの親衛隊(SS)の一員にされてしまう。②ユダヤ人ではないのにユダヤ人として強制労働をさせられ、ユダヤ人として罵られる。そしてユダヤ人ではないためにユダヤ人救済機関に助けてもらえず、身分証を持たないために利用され、挙句の果てにはナチのSSの一員にされる。やがて形成が逆転し、ナチが連合軍に追われる立場になり再び身の危険にさらされる。「運命に翻弄される」というが、ここまで翻弄される人生というのも悲惨を超えて滑稽にまで思えてくる。アンソニー・クイン扮するヨハンは無知だが、力強い生命力とどんな絶望的な状況にあっても生き抜く鈍感力を持ち合わせていて、見ている方は彼が何度となく危機に直面しても、なんとかして切り抜けるだろうという希望を持ち続けることができる。③戦後、ヨハンがナチの一員だったとして裁判にかけられるシーンは必見である。8年もの間離別させられた愛妻からの手紙を弁護士が読み上げるシーンと、それに聞き入るクインの演技は感動的だ。結末も何とも言えない余韻があり、ジョルジュ・ドルリューの音楽も素晴らしい。
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