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新・ガンヒルの決斗のFilmomoのレビュー・感想・評価

新・ガンヒルの決斗(1971年製作の映画)
4.6
①アメリカの社会背景が、ベトナム戦争、公民権運動、冷戦とあって、第二次大戦後に生まれたベビーブーマーたちと親世代の間にゼネレーションギャップが生じていたということを踏まえて、この1971年に製作されたこの西部劇を見ると、「傍若無人で無軌道な若者VS酸いも甘いも噛みしめてきた熟年」というテーマがはっきりとわかる。有名ではないけれど、この映画のヒール役のロバート・F・ライオンズは、同時代の『ダーティーハリー』のアンディ・ロビンソン、『時計じかけのオレンジ』のマルコム・マクダウェルと肩を並べる悪童ぶりだと思う。実はこの人は『…YOU…』でハリソン・フォードと共にエリオット・グールドの友人役で出ていて、こちらでは本当に人の好さそうな学生を演じているのだから芸達者としか言いようがない。②ほのぼのとしたシーンと、戦慄するシーンが混在して観客はジェットコースターに乗っているような感じで感情を揺さぶられる。昔の女が金と一緒に寄越してきた少女との交流シーンは心温まり、チンピラたちが一軒家に上がり込んで暴力と悪の限りをつくすシーンは、『時計じかけのオレンジ』でアレックスが小説家の家で暴れまくる場面を彷彿とさせる。③この映画の面白いところが、本来の目的の人物と決闘するのではなく、その人物が遣わした邪悪な若者と決闘するはめになるという展開である。これはやっぱり、前述したような大人社会から見た若者への恐怖や怒りの表れではないかと思う。すでに70歳を超えていたヘンリー・ハサウェイ監督作と考えると納得するものがある。そしてこの映画の公開の3年前にシャロン・テート事件が起きている。あの事件も3人組による犯行だった。ハサウェイ監督の胸の内に理解できない恐ろしい若者というイメージが生まれたのではないか。ちなみに71年公開の西部劇というとラルフ・ネルソン監督の『ソルジャー・ブルー』とアーサー・ヒラー監督の『小さな巨人』がある。西部劇はもう新しい時代に入っていた。
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