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カティンの森のtorakoaのレビュー・感想・評価

カティンの森(2007年製作の映画)
4.0
1939年9月17日、ポーランド。ドイツの侵攻に加えロシアの侵攻。正確な情報を得られないまま逃げ出さねばならない人々の群れ。その中で逆行するように移動し夫を探し求める母子は連行される前の夫に束の間会うことがかなうが、といった導入部だが、この一家が主人公という訳でもない。戦争により、カティンの森事件により人生を狂わされた人々を俯瞰的に見せていく、どこかドキュメンタリーのようなテイストが感じられる作品。だと思う。

視点人物が入れ替わりながら進行し、説明が少ない作品でもあるので物語としてはわかりにくいところがある。ただし物語としてはそうであっても作品の粗にはなっていないと思う。感情を廃したような筆致が事実を想起させるというか。為す術なく傍観するしかなかった多くの人々の表現にもなっているように思った。
そして、この作品を観ればポーランド国旗どんなだっけ?ってなることはまずなくなると思う。印象的であり、私にとっては衝撃的でもあった。考えたことがなかったので。

鑑賞後、監督の父親がこの事件で亡くなっていることを知った。怒りや思い入れが強くある題材だろうに傍観者的な筆致で描いたことが凄いと思う。
知るべき事件、観るべき作品。

吹替なし。
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