戦場の中。原作既読。
スタイリッシュな市川崑を観たい的に思っていたので敬遠していた俄かファンでしたが、、
間違っていました。。
とうぜん暑くるしい映画のテイストではありますが、その描写のバランスに市川崑監督らしさを感じました。
ということで、一人の人間が、飢餓の極限状態の中で倫理をどこまで保てるのかという話。。
壮絶な銃撃戦とかはないのです。
レイテ島を舞台にに追いつめられた日本兵たちの話で、
ほぼ敗戦の頃ですね。
(「失敗の本質」とか付け合わせると解像度が上がるかもしれません)
何も食えない。何も飲めない。敵の気配はある。味方も手持ちの食べ物狙っているという。
終わりが無いオープンワールドIN地獄!みたいな環境の中、陰惨な状況とその描写をひたすら見せつけられます。
生なましいその後の最悪の光景をイメージさせられるという意味ではホラーと言ってもいいのかもしれません。
ここまでやらないと伝わらないという気迫を感じます。
主としては、究極の飢餓状態に陥った時、
目の前に何かあったら食べますか?
肉があったら食べますか?
というところ。
究極に腹が減ればそれは食べますよね。
ただ、その肉というのが、
「猿」とか「野豚の肉」とかで語られるのですが、
果たして、それ、本当に「猿の肉」なんですか?という疑問が湧いてきて、
「猿の肉」じゃなかったら、この肉は、一体なんなんだ!?
ゴゴゴゴ…
という、ある種のサスペンスにもなっていきます。(猿の肉もそれはそれでですが)
この辺りは語り口のおまちかね的いちばん過剰なところではあるのですが、
決してそこだけではない恐怖がありました。
怖いのは、、
市川監督なのに演出的面白さみたいなところに依っていないところなんですね。
感情に訴えません。
淡々とカタルシスもない。
涙もない。
ただ茫然とするしかない。
その状況を描くのは、戦争を知っている世代のリアルな怖さを感じますね。
事象を映すのみということ自体がこの映画の凄みを感じたところでした。
ただですね、
ひたすら事象の陰惨さを全く飽きることなく退屈させることなく、展開させ、ある種、冷静になる余地をこちらに用意してもらえるのは、やはり市川監督の演出ですね。
世界平和を祈ります。本当に。