円柱野郎

スイミング・プールの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

スイミング・プール(2003年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

英国の女流ミステリー作家が訪れた南仏にある出版社社長の別荘。
静かなで快適な別荘で一人創作を進める彼女だったが、ある日、社長の娘がその別荘に現れる。

冒頭の地下鉄のやり取りだけで主人公が難物だという事が感じ取れ、人物描写が上手いなあと感じた後は、観る者によってどうとでも取れるような話になっていく。
どこまでが観たままの現実なのかよく分からないが、叙述トリックを映画でやったらこんな感じになるんだろうか。
まあトリックなんてないけどw
そんな具合にある種の映像表現としての面白みは感じるものの、ミステリーとして観てしまったら何もかもがミステリーのまま終わってしまうので、映画に“答え”を求めると拍子抜けするかもしれない。

色々と解釈への手がかりは描かれているものの、基本的には観る側の想像にゆだねられたままで終幕する。
個人的な印象で言うと、社長の娘のジュリーは主人公のサラが頭の中で作り出した人物かもしれないし、もしかしたらこの映画の話が“SWIMMING POOL”という本の中身なのかもしれない。
そんな風に思った。
それにしてはジュリーの実在感が強すぎる気もするけど、少なくともサラが抑えている欲求を開放している様な対局的な存在であることからすると、そう受け取るのは簡単だと思う。
ジュリーとジュリアが別の存在だとすれば、ね。

ラストでサラが着ている服が示唆的で、ジュリーの母親の小説を世に出すという行為からもさらに虚実が混濁していくけれど、監督によって煙に巻かれるその過程を体感する分には面白く観れた気はする。
円柱野郎

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