新潟の映画野郎らりほう

キングダム見えざる敵の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

キングダム見えざる敵(2007年製作の映画)
3.0
【対テロ戦の意義】


嫌な映画だ。

望遠でキャメラを急速に振る事による「大きな揺れ/振れ」。定点監視カメラが捉える冷たい映像。映像の質感…。 ~ 過去ニュース映像を相当に参照したであろう各場面の構図/シチュエーションが[虚構/劇映画を観ている私の思考を 現実の問題へと飛ばす]。
常に命の危険に晒されているヒリヒリとした緊張の全編支配と、アクションの強度もかなりのものだが 特に終盤は映画的彩美性を排し「人が人を殺す恐ろしさ」を強調。
他者への理解の拒否が 他者を恐怖/攻撃の対象としてしまうのだろうか。
嫌な映画だ。



オープニングタイトルロールが非常に凝っていて デザイン的に優れているのは勿論、現実を下敷きに劇映画へと列なる重要な役割を果す場面と感じた。
本編は中東掘り下げ不足感も無論あるが 先述の通り[現実を踏まえたフィクション]である事を思えば充分だし、むしろ現実に接近し過ぎない事でドキュメントやニュースではない[劇映画ならではの問題発信]を成功させている。 むしろ中東の細かい所を訴える事が最優先項目では無く もっと巨視的な[対テロ戦の意義]を問う作品なので 考証/設定の掬い上げは この程度で充分だろう。

但し、事象をリアルに描写する事には長けているのだが 各人物の内象への迫り方が弱い。
ラストに示されるのは[復讐を否定する復讐劇]だが、それ迄の流れと終局の対比構造のバトルで充分示されているのに 尚ラストの一言を添えるのは蛇足であり そこだけが惜しい。




《劇場観賞》