サム

バットマン リターンズのサムのネタバレレビュー・内容・結末

バットマン リターンズ(1992年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

乗り気ではなかったらしいティム・バートン監督のバットマン二作目。前作が記録的ヒットだったのでコケたとも言われるみたいだが、4億ドル→2.6億ドルなので十分なヒット作だと思う。

自分はバートン版バットマンではこの作品をグイッと推したい。十八番である綺麗な雪景色、クソダサいアヒルの乗り物、無駄にハイテク多機能な傘とセンスが良いのか悪いのか分からない。キャラも強烈。あろうことかサブ役に利用されるセクハラ親父(メイン悪役)、開放感から派手に部屋をぶっ壊していくクセにわざわざマイコスチュームは自作・手編みで作っちゃう女敵とやたら人間味全開。地味ながら主人公も負けていない。何事もなく前作ヒロインと破局してやがるし自慢の衣装は無駄に数十着もストックしてやがる。こんな三人が揃い踏みする場面は正直「真夜中の変態たち」にしか見えなくてすごい。

特に大量のペンギン(無駄に本物を仕込んでいる)がミサイル抱えて街に大挙するシーンはおよそアクション映画にはあり得ないシュールさ、放送事故寸前で笑う。

とにかく何かがみんなチグハグで滑稽なんだけど、よく見るとそこかしこに非情な現実がチラついていて、そこにバートンらしい歪な開放感、リアルとの疎外感がさりげなく滲み出てると思う。


監督が愛したペンギンがやっぱり映画の主役。すぐ調子にのるエロ親父だし、頭は良いけどコミュニケーション能力はないし、カリスマ性も半端で最終的に人間からは見捨てられペンギンたちしか看取ってくれない無様なラストを迎える、このカッコよくも可愛くもない傍迷惑な謎キャラ。魅力なんてなさそうに見えるが、最初の彼の望みを踏まえて映画を見るともう見てられない。「あぁそうじゃねぇだろ、そんなことしちゃダメだよ」とその行動原理の不器用さが切ない。このモンスターを怪演したダニー・デヴィートは見事賞レースで最優秀助演賞と最低助演賞の両方にノミネートされた。このキャラに相応しい結果と思う。


大衆向け娯楽作でありながらよく見ればみるほどバートンらしい奇妙な作品に仕上がっている。合う合わないなど評価が分かれると思うが、スタイリッシュすぎるノーラン版には絶対ない味がここにはある。


最後に重要なことを書く。この映画のキャットウーマンは衣装あいまってエロい。2015年7月、海外サイトにて「映画至上最もセクシーな悪女」ランキングにて堂々の一位に輝いていたのを見て、俺は「わかる」と心から思った。なおのちに発表された同名映画は、なんというか見ない方がいい。
サム

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