サム

ビッグ・アイズのサムのネタバレレビュー・内容・結末

ビッグ・アイズ(2014年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

久しぶりに映画を見たので記録。ティムバートン監督作には思い入れがあるものの、アニメーション方面はともかく近頃はアリス→ダークシャドウと相当なガッカリ作が続いていた。今作はエドウッド的なノンフィクションもの、そしてあらすじ(題材)も面白そう…と久々に期待の映画だった。

軽く歴史的背景を調べた。主人公の描く、当時一大旋風を起こした「ビッグアイズ」の無言で何かを訴えるような存在感は天性のもので、のちにパワーパフガールズなどのデザインにも影響を与えたそうだ。悪者になる夫の方も商人としては天才。売り込み方に加え、なんせ絵画をポストカードやチラシにコピーして販売するという、現代では当たり前の手法を取り入れたのは彼らしい。すごい。その方法論はアンディ・ウォーホルにも強く影響を与えてたり…と、一大旋風を起こすだけの強力タッグだったんだなと思った。それだけに物語を見ていくと二人の関係は奇妙で、惜しい。役割分担として最高だったのに…。


内容は結構面白かった。ただ、ド派手なスキャンダル話なのに爽快感もほとんどなしに進むので不思議と地味目。主人公の女性は悩みをホントの後半まで内に溜め込み続けるし、時代を席巻していく様もその主犯に好感が持てないからウワー…となるばかり。世紀の大嘘話だし、いくらでも盛り上げようはあったはず。ただ、そこの爽快感は抑えて、当時の男性社会での女性の抑圧に、作品に誇りを持つこと、自立、ポップカルチャーの広がり方といった渋いテーマを打ち出してきたのは、地味だと思うと同時に真摯に史実に取り組んだ印象を受けた。その辺りはエドウッドに通じるバートンらしい視点を感じた。

ただ、割と展開が大味に思えてしまったのが残念だった。特にビッグアイズのもとになった主人公の子供の描写が少なすぎて驚く。妻を利用して外で荒稼ぎする夫、ひたすら部屋にこもり絵を描く妻、ってどう考えても子供が歪みそうだけど、特に何もなく育っていくのに違和感。主人公の自立はともかく子供へのフォロー少なすぎでは…。そして終盤は、バートンだしやっぱりというか「スリーピーホロウ」よろしくのオマージュ的サスペンスをチラリ入れてしまうんだが、今作には別にそうしなくてもと思ってやまず。

全体的には見てよかったなーという映画だった。スーパーマーケットでのワンシーンの気持ち悪さはかなり印象的だし、抑圧の中で自分の子供でなく自画像も描き出したシーンもよかった。相変わらずダニーエルフマンの音楽も最高でした。
サム

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