YukiSano

2001年宇宙の旅 新世紀特別版のYukiSanoのレビュー・感想・評価

5.0
IMAX観賞。
凄まじい迫力でオープニングの地球と太陽で大感動。

特撮の細部まで観ることが出来て、改めて半世紀前とは思えぬ緻密なディテールとセンスに脱帽した。

ハイライトのスターゲイトでは、地響きと共に劇場に時空の歪みでも生まれたかのような臨場感を味わえた。

観に来てた人みんながマニアックなのも伝わる雰囲気の劇場で、でも観すぎてるために眠い空気になったのだが、スターゲイトで全員起きて引き込まれたのが分かるほどのド迫力であった。まさに飲み込まれるとは、このこと。

しかし脚本という観点で観ると、この作品はスカスカかもしれないし、今でさえ普通の映画の基準では考えられないストーリーテリングだろう。低予算のヨーロッパやロシアの映画なら納得するのだが、凄まじい予算のかかった今風に言うVFX超大作なのだから奇跡のような作品だ。観客動員数で言うと映画史上150位くらいで、トイ・ストーリーとかと同等の大ヒット作なのだ。多分、映画史上最も当たった実験映画と言えるだろう。

この作品の何が、そんなに凄いかと言うと、やはりビジュアルだろう。他のSF名作であるブレードランナーやターミネーター2も脚本は、どちらかと言うとスカスカな方だと思うのだが、その圧倒的なビジュアルと自分で解釈できる余白がバランスよく出来ていると思う。

2001年は、その深遠なテーマと哲学が語られ続けているが、同じようなことをテーマにした名作は沢山ある。なのに、ここまで伝説となったのは、やはりビジュアルセンスが地球で一番だからだと今回改めて思う。古びないどころか皆が、まだお手本にするので永久にマスターピースで居続けるだろう。

核戦争直前に宇宙人が、地球人を進化させるという物語である原作のエッセンスを隠し、ナレーションで説明を全て排除した結果、生まれた大議論は一応落ち着いてはいるのだろうけど、時代と共に解釈が変わっているとも言える。

それは、キューブリックが作った余白に皆が自分で想像したからだ。この作品がいつまでも色褪せないのは、皆が議論した結果でもある。何通りもの解釈が伝説となり、深みが永続的に続くのだ。結論の出ない幸せな議論が約束されたなら、それは、いつまでも語られ続ける。

つまり皆が神話を作り上げたとも言える。本当の名作とは人々に自分で考えさせ、己の結論を導かせながらも、その人の心の中で変化し続けるものだと思う。

それが出来た究極の作品をIMAXで観られた幸せを噛み締めながら、次に観る時は、死ぬ前に宇宙空間とかで観たいと願う。

今回、この作品から受け取ったメッセージは「進化せよ」。
YukiSano

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