馬井太郎

羊たちの沈黙の馬井太郎のレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
3.6
監督ジョナサン・デミは、「刑事コロンボ」シリーズの「美食の報酬」で、メガホンを握っている。このシリーズは、一貫してドストエフスキー「罪と罰」の作風を踏襲し、膨大な作品を残している。
この映画(羊たち・・)では、その匂いは全くなく、淡々と犯人を追い詰めていく。それにしても、この感想・評論の数の多さは、なんということだろう。一世を風靡したことがわかる。
当時、行きつけのスポーツクラブの更衣室で、この映画の話が出たことを思い出す。「観たか?」「観てない」「早く観ろよ、時代に乗り遅れるぞ」みたいな会話だった。

原作読みと映画のどちらが先だったか、憶えていないが、原作のほうに感動したことは、たしかだ。視覚化よりも、想像の方が上回ったのは私だけかもしれない。
レクター脱獄の迫力はさすがだが、動員された警察官の頼りなさ・ダサさ、は、なんとも笑い顔さえつくれなかった。
犯人の裸体ダンスにさえも、がっかりさせられた。
何といってもいいのは、ラストシーン、暗黒の室内、犯人を追うクラリス・クライシス、だ。この息遣い音、マイクは、これでもか、というくらい、大きくとらえた。
そして、晴れて卒業式、クラリスの、満面の笑顔、素晴らしい! これがなかったら、ジョディ・フォスター・ファンは、いまほど増えなかったかもしれない、とは、ちょっと、オーバーかなあ。