馬井太郎

昼顔の馬井太郎のレビュー・感想・評価

昼顔(1967年製作の映画)
3.3
森のなかの道を馬車が通る。鈴を鳴らしている。この鈴が、どこに付けられていたのか、わからない。もしかしたら、それは、馬にではなく、バックミュージックとしての効果音だったのかもしれない。これが、意外な緊張感を画面の奥から放っている。

日本での公開が1967年9月、およそ48年も前のこの映画でのいちばんの見どころは、当時、24歳であったカトリーヌ・ドヌーヴ(セヴリーヌ)の魅力・美貌だろうとおもう。金髪・肌の透き通るような美しさ、当代ナンバーワンであった。何度もTV放映されて、チャンネルを合わせることも多いのに、これ以外には、これは! というところを、いまだ見いだせないでいる。唐突で理解に苦しむ心象?シーンの挿入はその代表格だと思っている。

前半と後半とでは、タッチががらりと変わる。
女郎屋での客は様々で、顔を踏みつけられて悦ぶ(よろこぶ)おじ様など、まるで、お笑いコントのようである。
黒の外套を身に纏って、杖を携えたピエール・クレマンティが、客としてドヌーヴのいる女郎屋やってくるところから、スクリーンムードは、一変する。
この不気味な男、ドヌーヴを指名して、衣服を脱がせ、ベッドに押し倒す。上になったクレマンティを、カメラは、足の方に移動していく。男は、バタバタさせた両足だけで、ブーツを脱ぐ。ブーツは、床に落ちる。その時の男の靴下に注目だ。かかとの部分、大きな穴(穴と云うよりも、破れ)ができていた。私は、大笑いしてしまったが。・・・と、ここからが、メインディッシュとなっていく。

それからの、その味付けたるや、いかがなものか。・・・いちど、ご賞味いただきたい。
ドヌーヴが、なぜ、女郎屋にいるのかって、素朴な疑問、よくわかる。その答えこそ、この映画のテーマなのかなあ、って思うことも・・・ある?

ラストシーン、鈴の音とともに、馬車がやってくる。・・・はて、乗っているのは、誰だろう?
見える人には、見えてくるって?・・・ううーん、何とも云えないか。