馬井太郎

奇跡の2000マイルの馬井太郎のレビュー・感想・評価

奇跡の2000マイル(2013年製作の映画)
4.8
朝、映画情報サイトを閲覧していたら、たまたま本編に突き当たった。何と、ミア・ワシコウスカ主演ではないか。
朝飯をさっさと済ませ、初回上映時間の2時間前に劇場の窓口に行くと、空席はこれだけです、と言われて、見ると、最前列の数席しかなかった。客は、さらに増え、最後列に立ち見ができたことを、場内アナウンスで知らされた。

百人見れば、百通りの感想がある。正誤を問わず、私なりには、単なる冒険旅行映画ではない、と、まず、結論から先に言わせてもらおう。

◎ロビン(ミア・ワシコウスカ)一行(ラクダ4頭&犬一匹・・・途中から案内人ひとり)は、あるところで、車でやってきた観光客たちと遭遇する。彼らは、徒歩でラクダを引きながら移動するロビンに大いなる興味を抱き、記念写真撮影を要求してくる。ロビンは、相手にしない。物見遊山だけのツアーとはわけが違うからだ。見世物ではない。無視してさっさと先を急いでいく。
(ところが、無視したロビンを脇目に案内役のアポリジニ男は、ここで、ちゃっかり、旅行客から3ドル(たった?)を頂いてしまう。満足げなアポリジニ。この件(くだり)に、私は、思わず笑ってしまった。)

◎ロビンの写真をところどころで撮影した(同行しない)サポーター役のアダム・ドライバーによって、彼女の冒険旅行が新聞掲載され、世に広く伝えられると、多くの報道陣が彼女を追って取材にやってきた。
このとき、ロビンは、報道陣らに向かって、「Go away」(・・・だったかな?)「さっさと、立ち去れ!」みたいなことを、繰り返し叫び続ける。取材されることを、必死に拒んだのである。

長々と書いてしまったが、これが言いたかったことである。もし、彼女がこの大勢の報道陣に取り囲まれて、インタビューに答え、一緒に記念写真を撮られて、新聞に掲載でもされたら、全てが、おじゃん、になってしまう。この旅行の目的は、そんなものではないからだ。
この、上記ふたつがあったからこそ、この映画は、成功した、と私は、思っている。

徒歩旅行だからラクダには乗らない。食事のシーンも映らなかったが、もちろん、食べなかったわけではない。アポリジニの食料?「芋虫?」が、アルミ鍋の底でうごめいていたのには、ウェッ、となった。
更に特筆すべきは、色彩だ。夕陽、逆光・斜光、映画は、いかに美しく光を撮るかによって、半分以上が決まってしまう。(持論)
そうだ、書き忘れてはいけない! 冒頭部分で聴けるラクダの吠える声、素晴らしい! 腹の底まで響いてきた。アップの顔もいい。ラクダがいっぺんに好きになってしまった。
そして、やっぱり、何と言っても心に残るのが、ロビンのサポーター役とも云える同伴犬「ディギティ」だ。犬に詳しくないが、「ラブラドール・レトリーバー」ではないかと思う。北米ニューファンドランド原産で、知能が高く、働き者だそうだ。(間違っていたら、陳謝。ご教示お願い)

まだまだ、書きたいことは山ほど残っている。・・・ご一覧、お勧めしたい。

原題「Tracks」を「奇跡の2000マイル」としたこの邦題は、もう少し何とかならなかったかなあ、と残念に思う。外国映画のネックともいわれる日本での「タイトル」に関して、放映契約条件として規定があるかないか知らないが、原題のままでもよかったのではないか。
とはいえ、うーん、やっぱり、わかりにくいかなぁ?