みかん

キリング・フィールドのみかんのレビュー・感想・評価

キリング・フィールド(1984年製作の映画)
4.2
1974年カンボジア。内戦の取材をしていたアメリカ人新聞記者と、その助手をしていた現地カンボジア人新聞記者との友情を軸に、約3年8ヶ月で最大300万人を大虐殺したポル・ポト政権下で起きた実話に基づく、世界を震撼させた衝撃と感動のヒューマンドラマ。

前半の、アメリカ人特派員記者シドニーと現地カンボジア人記者で助手のプランの命懸けの取材活動には脱帽。

革命派による首都プノンペン陥落後の、外国人取材班がどうにかカンボジア人のプランも一緒に国外脱出出来るようパスポートを偽造しようと奮闘するシーンには感極まりました。

後半の、プランのサバイバル脱走劇には始終心拍数上がりっぱなし。

とにかく記者はもちろん、医者や教師など知識人を徹底的に虐殺した政権下で(眼鏡かけてるだけで知識人と見做され殺されたのは有名ですが…)身元を必死に隠して強制労働させられ飢えに苦しみながらも、どうにか逃げるチャンスを伺うプラン。

R指定無いので、直接的にグロいシーンはありませんが十分その残虐行為の凶悪さには戦慄でした。

例えばポル・ポト政権(クメール・ルージュ)で教育された監視役の子供。

大人を知識人じゃないか手の平を見たりしてチェックして(外科医なら手術で縫合する時につく糸の跡がついてるので見分けがつく等)、疑惑があれば容赦なく頭に袋を被せて摘発し、どこかへ連れ去って行く姿とかゾッとしました。

その後連れ去られた人々がどうなってたのかプランを通して知り、恐怖と絶望に突き落とされました。

こんな社会はおかしい。

しかし、反抗すれば殺される。

逃げようとしても殺される。

一歩間違えれば死という状況で、プランの監視をかい潜って自分を信じて進むしかない国境までの脱走劇は、その想像を絶する苦難と勇気にもはや絶句。

一方で無事帰国出来たシドニーの、置き去りにしてしまったプランへの罪悪感や、為す術のない辛さもリアルで胸が締め付けられました。

エンディングのプランの言葉やそっと包み込むように流れるジョン・レノンの『イマジン』は本当に心に沁みました。

ちなみに、プラン役を演じオスカー受賞したハインさんは医師で、俳優ではなく素人だったそうですが、実際にポル・ポト政権下で強制労働や拷問、妻と産まれてくるはずだった子供を亡くした方で、その壮絶な実体験が迫真の演技に繋がっていると知り、それだけで衝撃的でした。

思い出したくない程の恐ろしい恐怖を芝居として追体験することで客観視して、今はもう安全と実感することなどがセラピーとなり、計り知れないトラウマと闘いながら、時に挫けそうになりながらも乗り越えて演じていったそうです。

人間の国境を越えた友情の尊さや、命を脅かされることなく自由に生きることのありがたさを痛切に感じるとともに、このような大虐殺が二度と起きないよう、またカンボジアはこの痛みを乗り越えてきた国であるという歴史を知っておかなければと深く考えさせられました。


★1974年、アメリカの支援を受ける当時の政権VS反米革命派ポル・ポト率いる『クメール・ルージュ』の内戦の取材に、ニューヨーク・タイムズのアメリカ人記者シドニーは、現地カンボジアの新聞記者で、通訳兼助手のプランと組んで取材を進める。

やがて、『クメール・ルージュ』が首都プノンペンを制圧。シドニーら外国人取材班も捕らわれの身に。

彼らは帰国に成功するが、助手のプランは強制労働に送り込まれてしまう、、。
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