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カルメン故郷に帰るのkuuのレビュー・感想・評価

カルメン故郷に帰る(1951年製作の映画)
3.5
『カルメン故郷に帰る』
製作年1951年。上映時間86分。

わが国最初の総天然色映画として、松竹と日本映画監督協会が企画、高村松竹常務が総指揮に、よー知りませんが月森仙之助(大船撮影所次長)が製作に当っているそうです。
脚本と監督は『婚約指輪』の木下恵介、撮影は同じ作品の楠田浩之である。
色彩技術には富士フィルムの小松崎正枝と赤沢定雄が当る。
尚、同時に白黒映画も製作される筈。出演者は、タイムリーでは全く知らない高峰秀子、小林トシ子、佐野周二、笠智衆、佐田啓二などの他に井川邦子、望月美惠子、小沢栄など。

今や死語の『総天然色』ちゅう言葉。これって映画の広告上の表現の一種で、映画の題名の近所につけられている文字で、この文字があればカラー映画であることを示してて、映画を宣伝する上で、モノクロかカラーで興行成績にも影響する文言やったそうっす。

日本最初の総天然色映画の今作品。
こりゃまず記録に値するかな。
戦後の混乱がようやく収まって、まだ何年にもないのに、これだけ美しいカラー映画が登場したことは、日本映画界の底力がかなりのものであることを示しているんちゃうかな。
作中に登場する小学校の校長(笠智衆)が口癖のように、日本は文化じゃ けん、ちゅうそないな奇妙な言葉が妙にピッタリする作品やと思いました。
何しろ主人公が、幼い頃に牛に頭を蹴られて頭脳発育不全になったまま、技 体だけは美しく成長して、いまでは東京でも一流のストリッパーとなって故 信州へ錦を飾るという主人公やし、その味はうかがえるかな。
ふるさと信州そこは浅間山麓。
噴煙が静かに高原の空にたなび日本の風景としては珍重に価する牧歌的な美しさを背景として、ケバい極彩色の洋装に大きな帽子をかぶった、 蝶みたいなストリッ バー二人が歓声をあげて登場するんやし、当時は、まぁ度胆を抜かれ、ほんで、次に爆笑がわき起こったんが目に見えてとれる。
そのへんの選び方は木下恵介監督にまったくのソツがないって云えるんちゃうかな。
監督は初め竹蒲田撮影部の助手であったその職種を自分で選んでそこに入ったのか、撮影所へ入りたい一心で、仕事はなんでもいいということでそっちへ廻されたんか、その間の事情はわからんけど、撮影助手としてカメラを操作した経験は、彼の後年の仕事に大きくプラスしているものと思われるかな。
カメラワークはじつに流麗やったし、ライバルと目される黒沢明が海外の映画界においてカメラの魔術師などとも されてるけど、それは『羅生門』の山中を猿のごとく疾駆するカメラ操作に対する讃嘆で、それ以外にはそれほど魔術と呼ばれるような派手な動きは示していない。
その点、この木下恵介の方は、移動にしても、パンにしても滑らかでした。
今作品の高峰秀子を見てたら、マリリン・モンローにチョイ似てるかな。
今作品のキャラ(高峰秀子は演技、マリリン・モンローは演出)は、セクシーちゅうグラマラスちゅうかムッチリボディ、よく見りゃ超絶美人じゃない顔(🙇‍♂️)が似てた。
なんか不貞腐れたような物言いをする人やとも感じたけど、リアリティが有るんは巧みでした。
作中で映画のタイトルと同名の『カルメン故郷へ帰る』という歌を歌ってたけど、歌ウマってビックリした。
わかりやすくて楽しい清々しい作品でした。
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