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東京裁判のHKのレビュー・感想・評価

東京裁判(1983年製作の映画)
3.9
長らく録画したままだった長尺約4時間半のドキュメンタリーをようやく鑑賞。
裁判の25年後に公開されたアメリカ国防省のフィルムを5年かけて製作・編集した作品。
監督は『切腹』『怪談』の小林正樹、音楽は武満徹、ナレーションは佐藤慶。
勝手に裁判の様子が4時間以上延々と続くのかと想像していたら、裁判のみならず日本の歴史や当時の世界各国の情勢、裁判の周辺にもタップリと時間が割かれており、無知な私には今さらながら大変勉強になりました。

映画はトルーマン、チャーチル、スターリンによるポツダム会談から始まります。
終戦時の昭和天皇の玉音放送も全文フルで聞くのは初めてですが、字幕付でも私にはほぼ意味不明、当時の国民の皆さんの方がレベルが高かったようです。
映画の開始後、裁判そのものが始まるのは40分以上経ってから。
実際の裁判の期間は2年半に及んでいます。

A~C級戦犯とは、平和に対する罪(A級戦犯)、通例の戦争に対する罪(B級戦犯)、人道に対する罪(C級戦犯)の区別だとか。
単純にA級が最も重い罪だと思っていたら違いました。
日本国外でのC級戦犯の処刑もしっかりフィルムに収められています。

本作を初めて観て、東京裁判とは戦勝国11か国が敗戦国である日本を一方的に裁いたというより、世界に向けた政治的な一大イベントであったことがよくわかりました。
被告(日本)側のアメリカ人弁護士が「真珠湾が殺人罪になるのなら原爆を落としたのはどうなのか(なぜ日本だけが裁かれる?)」という言葉が発せられても法廷は沈黙するばかり。

じゃあ日本側が主張したように全員無罪ならよかったのかというと、そう単純な話でもなく、さまざまな政治的なかけ引き(天皇の免責含め)も見え隠れし、公平じゃないから東京裁判が全て間違いだったとも言い切れません。
やはり戦争をした国はどこも加害者と被害者の両面を持っており、どちらかが一方的に正義だということはあり得ないのでしょう。他国の戦争を傍観している国も含めて。

通訳の声まで聞き取れる当時の同録技術が凄い。いや、今のリマスター技術が凄いのか?
鑑賞後に気になった人たちをネットで確認すると、当然ながら顔写真が本編中で動いて喋っていた人たちと全くの同一人物。
役者が演じる再現ドラマではなく、事実を記録としてストレートに伝えるドキュメンタリーならではの力をあらためて感じました。
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