あーや

クローズ・アップのあーやのネタバレレビュー・内容・結末

クローズ・アップ(1990年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

自分のことをモフセン・マフマルバフ監督(イランを代表する映画監督)だと偽り、そのまま嘘をつき通して本当に映画を作ろうとした男の事件を本人も含めた実際の人物で撮った作品。全て本物の人物たちが出演しているのですが、裁判のシーンはキアちゃん自らズームとワイドの2台のカメラを持ち込んで撮影してしまいました。(こんなことができるんや!)
マフマルバフ監督に「映画に出て欲しい」と言われて喜んだものの段々と怪しいと疑いだした家族、そして当の偽マフマルバフ本人がビクビクし出す気持ちの変化が実にリアルでした。
裁判が始まり嘘をつかれていた家族は相当苛立っていたのですが、彼の家庭環境やマフマルバフ監督の映画が好きという気持ち、純粋に映画を作りたかったという熱意に次第に苛立った気持ちが解けてゆく。それはもちろん観客である私たちも同じ。
裁判後は憧れのマフマルバフ監督自ら彼のことを迎えに来て監督のバイクに二人乗りをして、迷惑をかけた家族へ謝りに行く。その道中で赤い花を買うのですが、その大きな赤い花の鮮やかな色のおかげか完全に私の気持ちはすっかり和んでいました。この作品には映画が好きな人しか出てきていない。
もちろん自分がマフマルバフ監督たという嘘をついた彼は罪に問われても仕方が無いのですが、映画が大好きな彼を撮り続けるキアロスタミのカメラが非常に優しい。暖かい。こういう形で終わる嘘なら罪にはならないよね。イランの映画人たちの優しさに癒された素晴らしい映画でした。
あーや

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