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フェノミナのHKのレビュー・感想・評価

フェノミナ(1985年製作の映画)
3.7
『サスペリア』『インフェルノ』などのダリオ・アルジェント監督によるホラー映画。キャストはジェニファー・コネリー、ドナルド・プレザンス、ダリア・ニコロディなどなど

第六感の発達により虫との交信をすることが出来る美少女が、スイスのジュネーブ近郊で起こるか弱い少女のみを狙った連続殺人事件に巻き込まれる。遺体に群がる蛆の特性から死亡推定時刻を推測する昆虫博士と仲良くなるが、彼も含め彼女と親しい仲の人間が巻き込まれて死んでいき…

後年、ヒットコンテンツとなった『クロックタワー』シリーズに登場するシザーマンのモデルとなったのも、この映画らしいですね。確かにゴアとかそういうのが大好きな人が引き込まれる要素満載の映画であったと思いますよ。

映画は序盤、デンマーク人の女がとある廃屋に迷い込み、そこで殺人鬼にハサミで襲われ首を切られ惨殺されるショッキングな場面からスタートする。

蛆やらゴキブリやら蠅やら蜂やら、蜘蛛やらサソリやらイナゴやら、見るだけで生理的に拒否反応を示してしまいそうなグロテスクな虫たちがあふれかえるあの昆虫学者の部屋を見るだけでも嫌悪感が募る。短いショットで細かく蟲達の蠢く姿を見せられるため、そういうのが苦手な人はこの時点で見る気が失せるかもしれませんね。

主人公のジェニファーが夢遊病で彷徨い殺人事件に遭遇するシーンなどは、部屋から殺人鬼に襲われ血塗れの女がドアップで出てくるなどショッキングな描写が多数である。

しかし、全体的に緩慢になってしまいそうな彷徨うシークエンスや移動するシークエンスなどで定期的にゴブリンやらアイアンメイデンの楽曲がSEとして流れるために、あまり緩慢としてしまうような所はない。

以前みたサスペリアPart2などもそうであるが、ダリオ・アルジェントさんてこういうBGMを、大体は主人公が絶体絶命な環境から抜け出したりする際にしっかりと挿入しますよね。ここぞの盛り上がる箇所でこういうBGMを入れるのは本当にセンスの塊。

この映画の中でも一番体を張っているのは間違いなくジェニファーコネリーでしょうね。ダリオ・アルジェント監督と言えばサスペリア辺りからもそうですが徹底的に女優を映画内で酷い目に遭わせて虐めることがモットー。日本でいうと相米信二監督みたいなものなのでしょうね。

この映画のジェニファーコネリーはバルコニーから落ちそうになったり、車から山奥に突き落とされたり、毒薬を飲まされそうになってゲロを吐いたり、しまいには…一番の見どころなので言いませんがまああれが偽物とはいえ気持ち悪くて演技出来なさそうですけどね。

劇中ではサスペリア2でも出てきたような薄気味悪い人形が出てきます。犯人はネタバレになってしまうので言いませんが、やはりあの造形などもアルジェント監督独特の悪趣味溢れるものとなっていますね。

しかしサスペリア2しかり、今じゃこういうプロットの映画って絶対に許可が下りなさそう。頭の固い精神科医の人たちとかから嫌われそうだし、偏見助長みたいな根拠のないこと言われちゃいそうですね。いや~しかしゴア描写は本当に生々しくてよかったと思いますよ。

自分はこういうグロとか虫とかはまだ大丈夫だとは思うんですけど、びっくり演出がやはり苦手でね。終盤の例のシーン、振り向くシーンまでのいないいないばあ演出ていうのかな、あそこはやはり地味に怖がってしまうんですよね。グレイブエンカウンターズのような映画とかでもう怖くなっちゃうんで。

チンパンジーのインガ君もこの映画ではとても良い味を出していると思いますよ。特にドナルド・プレザンス演じる虫博士を思いやる所とかがね。あそこでの諸動作も指導したのでしょうか。ラストシーンの活躍なども含めて本当に良いキャラクターをしていたと思います。

他にも第六感を発動して蟲達を学校中に呼び寄せるシーンとかの気持ち悪さと言ったらね、窓越しに映る夥しいほどの虫の裏側は本当に気持ち悪い。今でも思い出したら鳥肌が立ちそうだ。

ただ単純に血を出すだけならず、鋭利に我々の痛覚も刺激しそうなバイオレンス描写も特徴的。個人的には終盤のある男が手錠から抜け出すシーンとかの痛々しさとかね。

所々入るびっくり演出はやはりホラー耐久のない自分としては怖いと思ってしまったのですが、やはり見れて良かったと思います。幸いそこまで蛆に対して嫌悪感を示さない性格だったので、そこは良かったかなと。

虫嫌いは絶対に見ないほうがいい。そんな作品でした。
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