スペクター

アウトレイジ ビヨンドのスペクターのレビュー・感想・評価

アウトレイジ ビヨンド(2012年製作の映画)
3.8

「おぉ~ぃ わりゃー 黙って聞いとりゃ 
好きなことぬかしやがって ぼけー
おんどれりぁ 誰に向かって口きぃーとんにゃい えーー
会長がなぁ 会おうが会おまいがおまえらみたいなちんぴらに何の関係があんね
わぉおー あほかおまえら 偉そなくちききさらしやがって
落とし前はどうつけんのじゃい 指落とすのかい 腹切んのかい
おぇ 包丁持って来たれ ............. 」

ドスの効いた関西弁はやくざ映画には欠かせない。 一段と箔を付かせる。

これは、第2巻 『ビヨンド』 からの抜粋で木村(中野秀雄)と大友(ビートたけし)が大阪花菱会の会長に会いに来るも若頭の西野(西田敏行)らに軽くいなされる場面である。

福島県出身の西田敏行が放つ流暢な啖呵は、関西出身の私にとって小気味よく耳を貫いたのである。

いわゆる “たけし映画” はいろいろあるもいままで一切観ていなかった。
ところがこの 『アウトレイジ』 シリーズの第3巻 『最終章』 が封切られるときに
テレビ放映した 『ビヨンド』 をたまたま録画しておいたのを先日見たのである。

「おっ これは面白い」 「これは最初から見なきゃ」 となり
『アウトレイジ』 『ビヨンド』 『最終章』 と3巻通して見た。

結果、やっぱり 『ビヨンド』 の出来が一番いい。 [3.8]
テンポよくスピード感あり、それでいて丁寧なストーリー展開に注視されている。
キャスティングも申し分ない。

『アウトレイジ』 は、前置き設定などのもたつき感を考慮してもよくできている。 [3.5]
“R15” 映画とあってそれなりの場面がいくつか入っている。

『最終章』 これは期待したほどの作品ではなかった。 [2.8]
『ビヨンド』 でみせた丁寧なストーリー展開はどうしたのか、むしろ粗雑である。荒っぽい。
キャスティングも、前2作で贅沢に使いすぎて “タマギレ” の感がある。

監督兼主演の “ビートたけし”、カッコよくぶちぱなして、カッコよく死ぬ場面をこの最終章に残して置きたい気持ちはよく分かるが、
作品としては前2巻で完結しておくべきであったと思う。
主演大友(ビートたけし)としてはスッキリしない不完全燃焼の終わり方かもしれないが、
北野武監督作品としての格はむしろ上がったのではないか。

主なキャストとして、

* ビートたけし : 『1』 『2』 『3』 の主演。 元山王会所属大友組組長。
一匹狼的立ち位置が本シリーズのモチーフにピタリ嵌まっている。
相変わらず口下手であるが、常に “遊び心” を忘れず純な俳優として演じている姿に親しみを感じる。 が、
むしろ、北野武監督としての手腕、センス、感の好さの方を評価する。

* 小日向文世 : 『1』 『2』 で助演。 ヤクザ界の壊滅を目差す刑事片岡。 警察らしからぬ損な役回りを見事演じ切っている。 
この人が出る前後のシーンの謎解き・解説を受け持ち、この映画の無駄のないスピード感の演出に一役買っている。
『3』 ではこの人がいなくなり、どうなるかとおもったが、やっぱり、ストーリー展開のテンポ・スマートさは落ちている。

* 西田敏行 : 『2』 『3』 で助演。 花菱会若頭西野。
なぜ 『1』 から出さなかったかと思うほど、本シリーズ主演級のピカイチである。
この映画の重厚感を出している。 “他を持って替え難し” とは将にこの人のことである。

* 中野秀雄 : 『1』 『2』 『3』 の助演。 山王会所属村瀬組若頭。 後木村組組長。
大友に顔を斬られながらも、ゆくゆくは兄貴として立て2人して目的達成に進む。
最もやくざらしい、やくざの中のやくざを演じている。

* 加瀬亮 : 『1』 『2』 で助演。 山王会若頭石原。 元大友組金庫番。
英語も話すインテリやくざを好演。 最期が無残。

*大森南朋 : 『3』 で助演。 韓国張グループ所属用心棒市川。
チェジュ島で大友の舎弟的存在となる。 
大友と二人でカービン銃などで武装し花菱会を襲撃する光景は目を見張る。
ただ、大森南朋の役使いが物足りない。 もっと重要ポストの幹部役ならさらに凄みが出せたのでは。


第1作 『アウトレイジ』 のエンドロールに流れるテーマソングがいいね!
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