ぎー

ミッドナイトスワンのぎーのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.0
【第44回日本アカデミー賞特集2作品目】
「お母さん、継続です。大変でしょうけど頑張って乗り切りましょう。」
このバレエの先生のセリフ、それに対する草薙剛演じるお母さんの反応が全てを物語っているといっても過言ではない。
そして、
「バレエ、教えなさいよ」
という草薙剛のセリフの後に2人でバレエを踊る場面、ラストの娘の踊りで走馬灯のように思い返される母娘の交流に母娘の愛情の温かさを見て感動しない人はいないだろう。

LGBTやトランスジェンダーを描いた邦画史上最高傑作。
そして、もしかしたら映画史上最高傑作の一つ。
企業や学校でありきたりな教本や動画をインプットしている時間があるのであれば、2時間この映画を見た方が1億倍人生は豊かになる。
かなり考えさせられた。
どうして人と違うというだけで負い目を感じなければいけないのか。
どうしてマイノリティだと生きにくさを我慢しなければいけないのか。
レビューだとこんな表現になってしまって、それこそ企業や学校のありきたりのコンテンツと同じになってしまうが、そういった疑問や世間のおかしさを心の底から考え、悩むことができる映画。

と同時に、母娘の物語である。
圧倒的な母性愛。
そこに報酬への期待は全くない、完全に無償の愛。
草薙剛演じる主人公は女の子とは遠縁であり、肉体的な性別(この表現が適切かどうかは不勉強で分からないが)自体は男性である、特殊な関係性であるからこそ、それがありありと描かれる。
自分の時間よりも、自分の身体よりも、自分の命よりも、娘が大切なのだ。
こんなにも素晴らしく胸に訴えかける母娘の愛の物語を近年見ていない。
素晴らしい作品だった。

そして、草彅剛の魂の演技である。
圧倒的だった。
本当に凄かった。
演技派の彼といえど、間違いなくキャリアベスト。
そして草薙剛の娘を演じたバレリーナ、服部樹咲さん。
すごいオーラがあるように感じたし、是非頑張ってほしい。
もちろん皆が皆うまくいかないけど、売れる素質はかなりあると思う。

各所で絶賛されているが、テーマもあって腰が重い人もいると思うが、絶対に鑑賞した方が良い、至高の邦画である。
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