東京キネマ

眠狂四郎 悪女狩りの東京キネマのレビュー・感想・評価

眠狂四郎 悪女狩り(1969年製作の映画)
3.0
朝丘雪路さん追悼鑑賞3本目、これで最後です。

朝丘さんの役どころは、眠狂四郎馴染みの出会茶屋の女将役。これも看板で言えば5~6枚目の端役です。なんでこれだけしっかりしたお芝居をする朝丘さんの出演作が少ないのかなあと考えながら観ていたのですが、大きな理由の一つは矢張り時代の問題ですかね。本映画公開の2年後に大映は倒産。日活も本社ビルを売って、(金のかからない)ポルノ専門になったのがこの頃ですから、お芝居で魅せる映画がほぼ無くなりかけていた頃です。それに、朝丘さんのキャラが立ち過ぎて(勿論、良い意味で)、色っぽ過ぎて役所が固定化されてしまったという事もあるかも知れません。

さて本作なんですが、実はこれ、市川雷蔵さんの最後の眠狂四郎なんですよね。映画公開は1969年の1月で、肝臓がんでお亡くなりになる半年前です。もしかすると、やつれて映っているかなあと思っていましたが杞憂でした。相変わらず格好良いです。シリーズ13本目ということもあるのでしょうが、製作者も観客も、もう眠狂四郎と言えば市川雷蔵になっちゃって、本来の眠狂四郎を忘れちゃってますね。眠狂四郎は、転びバテレンと日本人の女との間に出来たハーフです。だから、市川雷蔵の髪は赤いのですし、肌は真っ白なんです。たしか原作では眼もブルーだった筈。なので、本来のルックスは完全に白人なんです。で、尾籠な話で恐縮ですが、後は連想ゲームで、外人だからアソコがでかい、だから女にモテる、ってところに繋がるんです。それに、当然ながらバテレンも大嫌いだし、神なんかも信じない。眠狂四郎のニヒリズムはここから来てるんですよね。

でね、この映画のサブ・ストーリーは隠れキリシタンなんですよ。勿論、大映は雷蔵最後の狂四郎になるだろうと知っていた筈なんですから、出自の話と繋げて、日本人化した白人という結論を、何かしらの形で見せないといけないんですよ。そうじゃなきゃ、このシリーズが終わらないんじゃないかと思うんですよね。永田雅一さんは資金繰りでそれどころじゃなかったのかも知れませんが、こういったエポック・メーキングな作品であればちゃんと作り込んで
くれないと市川雷蔵さんにも申し訳ないと思うんですけどね。。。
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