きよぼん

スター・トレックVI/未知の世界のきよぼんのレビュー・感想・評価

4.4
「人権という言葉は失礼ではないか!」

連邦が食事に招いたクリンゴンに言われる言葉。たしかに「人権」という言葉は「人としての権利」であり、地球以外の知的生命体とコンタクトしたら、この言葉の使い方は慎重になるのかも?そんなSF的な思考実験を含みながら、長年の敵だったクリンゴンとの和平交渉というスタートレック全体の流れでみてもポイントとなる物語が展開します。内容的にも艦隊戦あり、丁々発止の交渉あり、そしてカークの熱い言葉もあり!宇宙大作戦の集大成といえる作品です。

「集大成」といえば、カーク(W.シャトナー)とスポック(L.ニモイ)は、人生のひとつの場所にたどりついたような姿をみせてくれます。

正直いうと自分は若い頃、映画版のスタートレックってイマイチ好きになれなかったのですよ。TV版の壮年期のキャラが好きだった。だから大好きなキャラクターとはいえ、年老いて白髪交じりで皺だらけになったメインのキャラクターたちをみると、やはり心の中では距離があったのです。「老いる」ということへの怖さや哀れみを感じていたのです。

今回見なおして最終作を迎えた2人を見てると、時間がたつというのも悪くないな、と素直に思えるようになりました。

クリンゴンとの和平交渉という仕事は、若い頃の血気盛んなカークや、自分の考えにこだわりすぎるスポックには出来なかった仕事にちがいない。経験を経てきた彼らだからこその偉業だった。そこになんだか時間がたつことへの希望が感じられるんです。これも長い時間、同じキャラクターを壮年期から晩年までの姿をみれたからこそであり、演じてくれたシャトナーとニモイにも感謝したい。

時間がたつことは悪いことばかりじゃない。きっと未来は明るい。人種差別がない世界、何事も恐れぬフロンティアスピリット、高度な道徳心の体現などなど、スタートレックの面白さはいろんな言葉にできます。だけど一言で表すなら、全てにおいて「未来は明るい」そう感じさせてくれるという点に尽きるのではないでしょうか。
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