馬井太郎

幸福の黄色いハンカチの馬井太郎のレビュー・感想・評価

幸福の黄色いハンカチ(1977年製作の映画)
4.0
高倉健歴を「ウィキペディア」で見ると、出演映画の中に、小生が感想を書いた「疑惑の夜」は載っていない。新人時代の健さん映画、できれば、加えていただきたいものである。

本編上映中、得意先の社長から、「まだ観ていないのか!」と、頭を傾げられた。評判のいいこととは知っていたが、「やくざ・高倉健」ではないから、気が進まなかった。話を合わせるために、徹夜明けの昼に映画館に足を運んだ。そんな時間でも、席はかなり埋まっていた。
大した期待感もなく、ただ観ているうちに、心はどんどん、スクリーンに吸い込まれていったのである。
神の技・運命の出会い三人組、別れの時かと思いきや、そうは簡単に許さない、心のつながりは強くなっていく。
たこ八郎を叩きのめし、武田鉄矢の運転を代わってから、話は急展開していく。やくざ映画キャリアが、ここで蘇ってくる。
警察で取り調べを受けているとき、ふと現れた署長・渥美清がいい。最もいい役を演じた。

この撮影で使われた車はマツダの真っ赤なファミリア、ドライブを続けていくうちに泥まみれになっていく。
この映画の後に、同じタイトルで菅原文太主演、アパッチ研などでテレビドラマが五回放送された。この時の車種は何だったか忘れたが、最後の最後まで、車体はピカピカだった。
当時の北海道は、未舗装道路がまだまだ多かっただろう、と思われるので、鉄矢ファミリアの泥まみれの方が時間経過と現実味がある。
約束通り、黄色のハンカチをぶら下げて待っていた妻・倍賞千恵子、まさかあんな大きな櫓(やぐら)に、何百枚ものハンカチが風に揺れていようとは!
この映画のポスターで、観客には十分知れていたものの、劇場大画面で動きを見ると、背筋に熱い寒気と感動が震えとなって襲ってくる。私は、観終わって、本当に涙が止まらなかった。

高倉健よ、ご冥福を心からお祈りします。(2015.2.7)