shiho

ハウルの動く城のshihoのレビュー・感想・評価

ハウルの動く城(2004年製作の映画)
5.0
《呪いを解くのは、魔法よりも強い愛》

以前に思い出しながら簡単にレビューしてあったのですが、今回金ローで人生4度目くらいの観賞をし、感じ方がかなり変わったので再投稿します。

最近感動するとサクサクレビューが書けなくてつい長くなってしまい困っています笑

もう開き直ってそのまま行くので、どうかついて来て頂ける方は、お付き合い願えたら幸いです(*・ω・)*_ _)ペコリ


公開当時、劇場へ観に行ってパンフも買いました。
当時中学生でしたが、友人女子達の間ではハウルフィーバーが発生しました。
(給食の時間にテーマソングの『人生のメリーゴーランド』が流れるだけで「キャー!」みたいな笑。箸が転がってもおかしいお年頃でした笑)

名匠久石譲のあのヨーロピアンな軽やかで優雅なメロディー、
ハウルが王子様のごとく登場しソフィーの腰を抱えて飛び立ち、夢のダンスのように街の上を空中歩行するシーンは「ハウルの動く城」の代表名シーンであり、宮崎駿アニメーションの素晴らしさを言葉で語るより文にするよりも早く、ただただ素直に、ストレートに、否応なしに、心が浮き立ちドキドキワクワクさせられます。

さて、当時の私はと言うと、勿論ハウルにときめきはしたもののジブリ男子の中では断然千と千尋〜のハク推しだし、作品として扱っている要素が多くまとまりに欠ける気がした点や、ヒロインのソフィーのおばあちゃんタイムが長く見栄えがしないこと、後半の元荒野の魔女ばぁさんの迷惑お荷物感(笑)などもありそこまで心に来るものはありませんでした。
(一応ネタバレコメ1つめに記録として前回のレビュー残しておきます笑 ☆4.4ながらなかなかのストレート毒吐きぶりです笑)

でも今回観て、これは壮大なラブストーリーだと感じました。
それも一つじゃない、メインは勿論ソフィーとハウルだけど、マルクルやカルシファー、犬のヒンとおばぁちゃん、カカシのカブを含めた「家族」としての愛、他者への愛、ひいてはこの世界への大きな愛です。

原作の「魔法使いハウルと火の悪魔」も昔一度読んだのですが、映画化するにあたってかなり内容は変わっています。映画化というより「原案」といった方が正しいでしょう。原作者からの要望は「ハウルの性格は変えないように」のみで、作品の出来栄えには喜んでくれたようです。舞台は架空のヨーロッパで、魔法使いが存在し、彼らは魔法学校を出る時に国の召喚には必ず応じるよう誓いを立てさせられています。つまり火薬+魔法で戦争している世界です。
(ハウルはこれに従いたくないので、いくつも名前を使い分けて
「動く城」で自由に生きているのです。)

主人公ソフィーは下町の帽子屋の長女で、おとなしくて地味で自分に自信のない18歳の女の子。街で偶然魔法使いハウルと接触したことにより、ハウルを狙っている荒地の魔女に目をつけられ、呪いで90歳のおばあちゃんにされてしまいます。
おまけに魔女に呪いをかけられている、ということを他人には話せないやっかいなオプションつき。

仕方なくソフィーはこっそり家を抜け出し、当てもなく町を離れます。
しかし暖を求めてハウルの動く城へ忍び込み、男所帯の埃まみれの汚い部屋の中を見て、自ら「掃除婦よ」と言って居座り生活し始め、全力で部屋を掃除し、湖のほとりでお茶したり、生まれて初めて港町でお買い物したり、怒ったり泣いたり笑ったりしているうちに、むしろ呪いをかけられる前よりも生き生きとしてくる。

火の悪魔カルシファーも、美女の心臓を食べてしまうという噂の(実際はそんな事しないのだけど)魔法使いハウルも、弟子のマルクルも、「もう失うものなんてない」状態のおばぁちゃんソフィー相手にはとても敵いません(笑)腹を決めた女は強いですね(笑)

登場シーンからしばらくこれでもか!ってくらいイケメンキザ魔法使いだったハウルが、髪の色が変わったくらいで絶望して
「美しくないと生きてる意味がない…」
とか言ってデロデロになるの、どんだけナルシストや!ってむしろかわいく感じました(笑)バカだなぁ(笑)でもその気持ちわかんないでもないわ、前髪切りすぎた時とかさ(笑)

それでソフィーが怒って外行ってうわーんって泣いて、カブが傘さしてくれて、呼び戻された後「派手ねぇ」って言ってデロデロハウルを椅子ごとマルクルと押して、風呂まで連れてく一連の流れめっちゃ好き。

ところでハウルの髪の色が変わるのって、彼の不安定さや多面性、神秘性を表してるんだと思うけど、「エターナル・サンシャイン」という映画のヒロインもそうでしたね。これもねわかる気がするの。私も気合入れる日とか、前の晩に強めの色のマニキュア塗ったりするもの。ちょっと髪染めるのとはスケールが違うけどね(笑)

もう好きなシーン、心を奪われた台詞が多すぎて2日にわたって2回観てしまいました。
では私が好きなのだけ集めたよハイライト、いっきま〜す♡

「安っぽい店 安っぽい帽子
あなたも十分 安っぽいわね」

荒地の魔女襲撃シーン、最高!
チリーンって店のベルの音からソフィーが振り向いた時の魔女の佇まい。
呪いをかけられるシーンは軽くホラー!だがそこがいい!
美輪さんの台詞回しも、すごい良い!

「ハウルに心がないですって?
確かにわがままで臆病で何を考えいるかわからないわ。
でもあの人は真っすぐよ。自由に生きたいだけ。」

この前後も含めてソフィーの肝っ玉ぶりと芯の強さ、ハウルへの真っ直ぐな愛が伝わる素晴らしい台詞です。
この台詞を言っている時、ぐんぐんと彼女は若返って一瞬元の姿に戻るのです。
「お母様、ハウルに恋してるのね」とサリマン先生の台詞までが最高です。
(ソフィー、バレバレだね♡)
その後の「逃がしませんよ」シーンも大好き!
ちなみにサリマン先生の声を当てた女優さん、もうお亡くなりになってしまったんですね。サリマン先生超良かったです〜!

「あなたを助けたい!
あなたにかけられた呪いを解きたいの。だって私、あなたを愛してるの!」
「ハウル、本当のこと言って。
私、ハウルが怪物だって平気よ。
私、ハウルの力になりたいの。
私、綺麗でもないし掃除くらいしか、出来ないから…。」

もうなんだろ、このストレートな愛の言葉。日本人は奥ゆかしいのであんまりこういう事言いませんよね。以前のソフィーからは絶対出てこない、美しくて真っ直ぐな言葉です。
ちなみにこの後ハウルは、
「ソフィー!ソフィーはきれいだよ!」と言います。
世の女子の「私かわいくないから」的な発言には、98%くらいの確率でそれを否定して欲しいという思いが込められています(笑)が、ソフィーはガチで言ってて、
ハウルもガチで答えてる。
(多分ソフィーは普通にかわいい顔だと思うけど、ハウルの言ってる「きれい」は見目の事だけじゃなくて、彼女そのものに対してですよね)


「恋だね あんたさっきからため息ばっかりついてるよ」

帰ってこないハウルを寝ずに待つソフィーに、おばあちゃんからの一言。
そうか、恋してる時って、ため息出るよねぇ。
ここで思い出したのは、リストの「ため息」というピアノ曲です。
(とっても素敵な曲なのでぜひ聴いてみて下さい)
私はフィギュアスケートが大好きなのですが、平昌五輪で女子シングル4位だった宮原知子選手が2015年シーズンにこの曲をフリープログラムで使用した際のテーマは「初恋」でした。
濃いピンクの衣装で、心が踊ったようにステップを踏み、目がキラキラして、至福に包まれたように滑る彼女の演技・振付を今作鑑賞後に見直して、恋することって、愛することってなんて素晴らしい歓びであろうか、生きる糧であろうかと思いました。
(もしご興味があれば、2015年シーズンの全日本選手権か、グランプリファイナルで検索してみて下さい)

「ハウル 行ってはだめ!ここにいて!
逃げましょう!闘ってはだめ!」

「何故?僕はもう十分逃げた。
ようやく守らなければならない者が出来たんだ。君だ。」

自分を犠牲にしてでもソフィーたちを守りたいハウル、ここでグッとこない女性はいないんじゃないかな(笑)

『男は自分が強くなれる女を探し、
女は自分が弱くなれる男を探す』
とどこかで読んだのですが、ハウルはまさにこれですね。
ソフィーの存在が弱虫な彼を強くした。でもソフィーは逆に、守られているだけのヒロインじゃなくて、度胸の据わった正妻宜しく本当にハウルを愛の力で救い出してみせましたね。

「ジブリ男子の中で誰が好きか、
ハウルを選んだあなたはダメンズを捕まえがち☆」と以前テレビでやってたんですけど(笑)、ハウルのその危うげで子供みたいに真っ直ぐなところがまた、母性本能にクリーンヒットするんですよね。
キムタク、俳優としては何を演じてもキムタクなのにハウルの声は最高だったよ。

「魔女のばぁちゃんにサリマン先生の犬とは、カルシファー、よく城の中に入れたね。わが家族はややこしい者ばかりだな」ハウル
「僕たち、家族?」マルクル
「そう、家族よ」ソフィー

この中には誰一人血の繋がりのある者同士もいない、ちぐはぐ寄せ集め集団です。でも血の繋がりなんて関係ないんだよなぁって。心の繋がりだよなぁってしみじみ感じました。

ハイライト終了!笑

ちゃんと読んでなかったパンフレットを読み返したら、この映画の為にヨーロッパに取材に行って、そしたら向こうの街道はほとんど石畳で人の声や音がすごく反響するからそういう風に音を入れたり、ハウルの城のギシギシ動く音を出すためにスタジオにおっきい建造物作ったりしたんだって。すごいですね。

街の家の屋根の風合い、ハウルの城の中の家具、サリマンの部屋とか、背景美術の描き込みも素晴らしいです。

先日とある湖に観光で行ってきたんですが、水の純度が高いと本当に周りの木々の緑が写って、空の青が混じって、見事なグラデーションになってて、今作に出てきたソファー達がお茶してた湖まんまでしたよ。すごいリアリティの追求ですね。

今では立派に大人になった神木くんのマルクルの声も超かわいいし、カルシファーの褒められたらすぐノるところもかわいいし、前回「こんなババァ捨て置けよ…」って書いたおばあちゃん(元荒地の魔女)もむしろキュートに感じた。
案山子のカブのエピソードも超いいし、ヒンの一生懸命さに心打たれる。

最後、エンディングが流れてソフィーとハウルが絶妙なタイミングでキスするシーンも大好きです。愛してます。最高です。

今までマイベストの映画達は、単純に純粋に映画として自分がどれだけ楽しめたか、感動したか、興奮したか、好きかを基にセレクトしていたのですが、今回の鑑賞で今作がオールタイムベストになってしまったかもしれません。
何故ならソフィーに自分を重ねたから。これからどんどん老いていって人生は続くのかと思うとゾッとする時があったんです。

でもそんなことないやぁ!世界はこんなに素晴らしいんだから!って。
歳を重ねて良さがわかるものも沢山あって、新しい発見もたくさんあって、まだまだ自分は成長していけるんだって。
とっても生きる勇気をもらえました。
素敵な大人の女性になりたいし、
優しいおばあちゃんになりたいな。
「そう、心って重いの」!!
。゚(゚´Д`゚)゚。
何回も涙が出ました。

結論として、ソフィーの見た目年齢の変化は「生命力」「希望」みたいなものと比例してたんじゃないかと思います。

一分の隙間もない程完ぺきなハッピーエンドは、宮崎駿監督の平和への願いでもあるんじゃないかなと思いました。

最後に、この映画を観て思い浮かんだ歌のフレーズで締めさせて頂きます。

笑ったり 泣いたり
あたり前の生活を
二人で過ごせば
羽も生える 最高だね!

美人じゃない 魔法もない
バカな君が好きさ
途中から 変わっても
すべて許してやろう

ユメで見たあの場所に立つ日まで
僕らは少しずつ進む あくまでも


〜スピッツ「夢追い虫」より〜
shiho

shiho