回想シーンでご飯3杯いける

シンデレラマンの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

シンデレラマン(2005年製作の映画)
4.8
評価の高さは知っていたけど、2時間半の大作という事で躊躇していた作品をようやく鑑賞。とんでもなく素晴らしい!

1920~1930年代に活躍した実在のボクサー、ジム・ブラドックの挫折と復活を描いた作品なのだが、あまり格闘技が好きではない僕が観ても感動できる。しっかりとそういう作りになっているのだ。

何よりもブラドックをヒーローとして描いていないのが良い。大恐慌の時代が舞台で、ブラドックにとってボクシングは家族の生活費を得るための、あくまで仕事として描かれている。空腹に耐えられずソーセージを万引きした息子を諭すシーンに、彼の生活者としてのプライドがあり、それが終盤に向けて大きな意味を成していく。まだ女性は男を陰で支える時代であったが、気丈な妻を演じるレネー・ゼルウィガーにも注目だ。

もうひとつは何といってもファイトシーンの緻密な作り。1秒1秒のカットに無駄が無い。まだテレビが無い時代で、会場に入れなかった家族や友人は、ラジオの実況中継を通じてブラドックのファイトに耳を傾ける。ラジオに集まる人たちの真剣な表情と僕達観客の気持ちが重なり、映像だけでは到達し得ない高みに至る。息をするのも忘れるぐらい。

監督は名匠ロン・ハワード。働く男を描かせると彼の右に出る者はいないと思う。ファイトシーンで感じる興奮は「THE FIRST SLAM DUNK」のそれに近い。スコアは同作と同じとする。