一

愛情萬歳の一のレビュー・感想・評価

愛情萬歳(1994年製作の映画)
4.1
台湾の巨匠 ツァイ・ミンリャン監督作品

現代の台北を舞台に、ロッカー式共同墓地のセールスマン、露天商をしている青年、不動産の営業ウーマンという見知らぬ男女3人が都会の高級マンションの一室で交錯する様を描き出す

初ツァイ・ミンリャン作品でしたが、冒頭から20分以上全くセリフがなかったのですぐに察した

ぼんやり感がエドワード・ヤンの『恐怖分子』っぽい、というか全体的にエドワード・ヤン作品のようなテイスト

孤独な空虚感の中、自分を見失いそうになる人々を不気味なまでに冷酷に淡々と捉える続ける抑制された演出の数々
しかしどこか陰気で冷たいだけではない、愛や温もりを感じられるのは監督の力量以外のなにものでもない

孤独な3人の奇妙な関係が生まれる感じだったり、笑っちゃうようなシュールなシーンもいくつかあったし、そもそもとしておかしな話だけどシンプルに面白い部分もあるので、娯楽性は皆無でも観ていて苦痛になるような作品ではないかと

しっかり画で魅せながらの、極端なまでに少ないセリフや音楽を一切使わなかったりと、静謐さの塊のような味わい
しかしそれでいて生活音を効果的に取り入れたりと、恐ろしいほど映画的な語り口を徹底する感じがシビれるほどめちゃくちゃ巧い
そしてこんなラストを観せられちゃったらもう参りました

こんなドラマをひとつの映画にしてしまうツァイ・ミンリャン監督が凄すぎる

〈 Rotten Tomatoes 🍅※83% 🍿83% 〉
〈 IMDb 7.5 / Metascore - / Letterboxd 4.0 〉

2021 自宅鑑賞 No.295 ザ・シネマ
一