もるがな

トライアングルのもるがなのネタバレレビュー・内容・結末

トライアングル(2009年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

自閉症の息子を抱えたシングルマザーが、仲間とともにクルージングを楽しんでいる最中に嵐に巻き込まれ、運良く定期船に助けられるものの、そこは殺人鬼が闊歩する無人の幽霊船! しかも殺人鬼の正体は自分で、自分が自分を殺す地獄の殺人ループに閉じ込められる!‬

ループといえば巻き戻りだが、本作のループは状況のみに固定されており、時間が巻き戻っているわけではないというのが面白い。主人公のみ複数存在のパラドックスが許されており、前ループで殺した死体がそのまま転がっていたり、落としたペンダントがうず高く積まれる様は絶望感に満ちていて非常に良かった。

殺した人間がヨットで戻ってくるので全員殺せばループから脱出できるという発想は面白く、無人の定期船という幽霊船を舞台にしたシチュエーション、主人公と殺人鬼が同一人物というアイデアなどは突飛で素晴らしいが、ループもののお家芸である繰り返すことによるリトライ・リプレイ感が皆無であるため、話としては盛り上がらなかったのが惜しまれる所。特に主人公が早々に姿を現して、皆で相談してループ脱出の道筋を探るという展開がなかったことにはかなり違和感を覚えた。主人公が狂気に陥る様は上手く描けていたものの、それがありとあらゆる手段を尽くしてそれ以外残されてなかったが故の結果としての選択ではなく、ただ狂気に取り憑かれただけというのは面白みに欠ける。

船内で発生した全てのシチュエーションの顛末をちゃんと描いたクライマックスの構成力は中々のもので、冒頭の意味不明なシーン、主人公の抱えていた虐待という闇をループという現象に繋げたのはとても上手く、そこからさらに序盤に繋げることで、話自体を大きな円環のループの輪に閉じ込めたのは巧みな構成だと思う。

ようは息子を虐待した母親が無間地獄に落ちる様を描いた話なわけで、つまりは罪と罰の物語である。そう解釈すれば解決に動かず、主人公がひたすらに苦しめられる展開にも納得はいくし、虐待の連鎖という隠れたテーマとの符号性もあってとても上手く作られているとは思うが、見てて正直かなりしんどいものがある。ループ無間地獄というのがレトリックでも何でもないというのは意外だったが、結局何も解決しないというのもあって、あまりに後味が悪く、スッキリとしない映画だった。抜けられなかったループものという解釈は面白いので、同ジャンルを多く見た人間がマニアックに楽しむループものとしてはいいのかもしれない。
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