シャマラン!静かなるアメコミ!撮影・脚本が素晴らしい。オタク向けな良作。
以下ネタバレ。
まず第1に、この映画は撮影を非常にこだわっている。ほぼ全シーンが長回しワンショット。全然カットを割らない。大声を出す瞬間もほとんどなく、淡々とつぶやくようなセリフだけで続いていく。その空気感がかもし出すカルトっぽさがたまらんかった。
印象的なのはファーストシーン。単なる電車内のシーンなのに、座席シートの合間から撮る長回しで全くカットを割らない。で、主人公が隣の女を唐突に口説きだす。このキャラはなんなんだと思って観ているといきなり話が展開することになる。
最後の強盗とのアクションシーンもワンカメラで、非常に好きな雰囲気だった。
それから2点目、トリッキーな脚本も素晴らしい。変なオチにするのはシャマランの真骨頂だが、本作はヒーロー誕生へと導いたのは悪役の健康コンプレックスだったというド変化球。ヒーローとヴィランは表裏一体というのをテーマにしたアメコミってのが、はぁシャマランさん、あんた何がやりたいのって感じである。(褒めてる)
キャラ設定で、水だけが苦手というのも面白い。弱点を幼少期のエピソードに絡めて説明していたところもうまかった。
家族の関係を真摯に描くというシャマランの特徴は本作でも中心的な役割を果たしている。暴走した子供に本気で声を上げるシーンの意味は重い。あまり盛り上がらなくなった妻ともう一度デートするシーンも心に残った。もちろんこれらもワンショットで描かれる。この映画はミステリーでもあり家族ドラマでもあり恋愛ドラマでもあった。
地味だけど電話のやりとりが好き。自分の本当の姿、実力を、本人は意識していない。むしろ忘れようとしている。みな何かをキッカケにして自分に嘘をついて生きている。朝起きたときにさわやかだったか?と聞かれる。本当に生きているとは?を観ている人にも問いかけるようなセリフが印象的だった。
サミュエルLジャクソンのガチファン的に彼が出てくるだけで嬉しいわけだけど本作でも気持ち悪さが際立ついい役だった。
余談。
シャマラン監督は前提となるワンアイディアを奇想天外な方向に発展させていくことに命を懸けている。そして偏屈な枠を設定しながらも、家族というテーマを常に中心に添える。非常に綺麗なカメラワークから生まれる独特の緊張感。見終わるまでジャンルがわからないことが売りのひとつで、B級映画界の至宝といえる(震え声)