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アンブレイカブルのFilm日記係のレビュー・感想・評価

アンブレイカブル(2000年製作の映画)
3.8
【多少のネタバレ含む】

一言でいうと絵にかいたようなスーパーヒーロー映画だなという印象だった。とはいえこの映画は、私が人生で初めて観たスーパーヒーロー映画であるサム・ライミの「スパイダーマン」の2年前に公開された映画であるので、ある意味ヒーロー映画のパイオニアの1つといってもいいかもしれない。それでも、これぞM・ナイト・シャラマンというような終盤のどんでん返しの効いた脳裏に焼き付く印象深い作品であった。

フィラデルフィアで起こった131人もの乗員・乗客が死亡するという凄惨な列車事故の中で、たった一人、怪我ひとつなく生存を果たしたデヴィッド・ダンは、マスコミや周囲の者たちの異様な視線に戸惑う。なぜ自分だけが生き残ったのか、誰よりも彼自身がその答えを求めていた。そんなある日、イライジャと名乗る男が現れ、デヴィッドこそ不滅の肉体を持つ者“アンブレイカブル”であると告げる。その言葉をきっかけに、デヴィッドは自己の存在意義を問うようになり、そしてヒーローとして目醒める姿を描いたものであった。

ストーリーに関して、1時間45分ほどの長さの映画の中で、最初の1時間30分は話の展開もゆっくりで、正直普通だなという印象だったが、逆にそれだからこそ、最後の10分ぐらいの展開は身の毛のよだつ恐ろしささえ感じさせるほど衝撃的なものだった。

そしてこの映画は何といっても、デヴィッドを演じるブルース・ウィリスとイライジャを演じるサミュエル・L・ジャクソンの素晴らしい演技が見られる。

デヴィッドについては、物語の初めは家族との現状に違和感を感じていたが、列車事故からの生還を通して、妻や息子のジョセフ・ダンとの関係性が細かく変化し、最後にはスーパーヒーローという形で当初自分が求めていた何かを得られたことに喜びを見出すさまが上手く描けていたと思う。特に、デヴィッドの怪力を目の当たりにし、イライジャの言葉を鵜呑みにした息子のジョセフが、デイヴィッドに銃を向けるシーンは個人的に一番緊迫したお気に入りのシーンだ。

そうした喜びを一瞬にして破壊したのがイライジャであった。デヴィッドが生還した列車事故を含む過去3つの不可解な大事故は全てイライジャが起こしたものであるということが物語終盤で分かる。これを機に、アメコミ好きでこの世にスーパーヒーローがいると信じるイライジャの考えがいかに異常なものであるかということを痛感し、今でも頭から離れないシーンとなっている。ある意味イライジャは、肉体的には傷一つ負わないいデヴィッドの心に傷をつけた者といっても過言ではない。

また、イライジャは、デヴィッドの真逆で、簡単に骨の折れやすい“ミスターグラス”という特徴を持つものとして描いたのも、この映画の面白さの1つといえる。イライジャが、自分の身体的な特徴を顧みて、自分と真逆の特徴である肉体的に不滅な人間がこの世に存在するのではないかと信じるように運んだのは非常に自然な形でよかった。

映像面に関して、特に物語序盤の列車のシーンでの座席の隙間から2人の会話を映す映し方が個人的に結構好きだった。また、デヴィッドの触れた者の悪行がフラッシュバックするという形で、イライジャの本性が垣間見えるシーンの映し方も、あたかも防犯カメラの映像を見てしまったかのようなゾッとするものであった。

ストーリ中盤までは割とありきたりながらも、終盤に大どんでん返しをもってくる、観やすいながらも印象に残りやすい作品であった。

面白さ:0.8 脚本:0.7 人物:0.8
映像:0.8 音楽:0.7
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