もものけ

デモンズ’95のもものけのネタバレレビュー・内容・結末

デモンズ’95(1994年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

うまくいかないと嘆くより、自分の道を切り開いて歩みだし、すすんで灯りをつけましょうなのねぇ〜……。

フランチェスコは墓地で管理人を務める孤独な青年。
知恵遅れで助手のナギと共に、7日後に蘇る死者を片付けるのに大忙し。
そんなある日、年老いた夫を亡くした若い未亡人に一目惚れし、なんとか近づきたいフランチェスコは、その機会が来るのをひたすら待ち続けるのだった。


感想。
定期的に鑑賞しております👍

「デモンズ」のタイトルがついてますが、相変わらずのダメダメな配給会社がやらかす、シリーズ化に見せて売ろうとする失策で、呆れて物が言えません。

ゾンビ映画ではありますが「デモンズ」は、悪魔映画なので基本的に全く違います。

しかし、お決まりのイタリア・ホラーなB級ホラー映画と思いきや、その創り上げられた芸術的作品として、かなりの評価を得ていまして、個人的には「デモンズ」のタイトルがついたシリーズ?の中では2番目に好きな作品です。

独自の感性と、完成度は高いですが、やはり師匠ダリオ・アルジェント監督の最高峰「デモンズ」には及ばないホラー映画です。
それもこれも、アホな日本メーカーが「デモンズ95'」なんてタイトルをつけたせいでもありますけど(笑)

非常に質の良いフィルムとカメラ構図で、良質のホラー映画としての映像が高く、コミカルな音楽が奇妙さを醸し出す作品を印象づけしております。
小道具の造り込みが、アップを多用した撮影で印象的な場面を創り出すスパイスになっており、納骨堂のゴシックホラーっぷりなど、世界観を非常にうまく構築しております。

相変わらずなイタリア・ホラー映画定番の女優の超絶美人さは健在ですが、トップレベルのスタイルではなかろうかというプロポーションで、妖しくエロティックに演じるアンナ・ファルチには圧倒されますが、スーパーモデルとのことで納得。

物語は、奇想天外摩訶不思議な展開ですが、不条理でありながら哲学的な幻想物語をゾンビ・ホラーと絶妙なバランスで描いており、高く評価されています。

墓地を管理する仕事で、夜通し蘇る死者達を処理する様が、やがて日中彷徨う生きる人間へ向けられる展開は、孤独でたまらなく構って欲しい精神状態が爆発しますが、「タクシードライバー」へのオマージュに思えます。

主人公は、学位もあるのに墓地の管理人の仕事にしかありつけず、町の人々から後ろ指をさされ、ガールフレンドも出来ず、劣等感を感じながら唯一下に見れるナギと孤独な生活をしております。
小さな町から出ることもなく、管理する墓地からすらあまり出ないフランチェスコは、世間知らずで自分の世界に浸りっきりな"引きこもり"にも見えます。

鬱憤を晴らすかのように、蘇る死者達を躊躇なく尊厳すら感じずに、漫画のブラックジョークさながらドタバタコメディ展開で倒していきますが、どこか現実味はありません。
青白いゾンビメイクで死者をおどろおどろしく再現して、コメディ感覚でグロ描写とエロスを交えて相反する演出をした監督のセンスは素晴らしいです。

フランチェスコが抱く恋愛観は、自己中心的で厚かましく、都合良いドラマティックです。

ここで感じるのは、その全てが"孤独"から引き出された"妄想"。
つまり不条理な展開である物語の全ては"妄想"であり、知恵遅れと思っていたナギはラストシーンで普通に話します。

そしてその存在すらも"妄想"であるかのように、スノーボールに二人が描かれて映画は終わります。
誰にも遊んでもらえなかったスノーボールが"孤独"の病に取り憑かれて起こした物語といわんばかりに。
自分自身を歩むために、狭い町からナギと旅立つはずが、スノーボールの世界でしか存在しない現実に気づき、ナギに「戻ろう」と言われるシーンがなんとも切ないですね。

破天荒な展開ばかりで、一見無茶苦茶ですが、幻想文学のように終末的世界観を表現しております。
そこはゾンビ映画の王道を忠実に守る演出は秀逸です。

フランチェスコが、常に詩的センチメタリズムを語る物悲しさが、コメディ・ホラー映画でありながら、なんとも言えない哀愁を感じさせ、より"妄想"的に捉えられます。

"孤独"を嫌い、"愛"に飢えた青年のメランコリックな幻想を、映像美と迫りくるゾンビ達の演出の奇妙で面白いアクションなど、非常にコミカルな幻想的ホラー映画に、5点を付けさせていただきました!!
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