あなぐらむ

懲役太郎 まむしの兄弟のあなぐらむのレビュー・感想・評価

懲役太郎 まむしの兄弟(1971年製作の映画)
3.6
文太兄ぃのBefore「仁義なき戦い」である中島貞夫監督とのコンビ作。
義兄弟の勝(川地民夫。日活からの客演、色々思うところはあったろうね)と暇さえあればゴロ(喧嘩)まく文太兄ぃだが、人情に厚く権力にはサツだろうがヤクザだろうが牙を剥く一本筋の通ったチンピラを元気一杯演じていて楽しい。
「ある殺し屋の鍵」→「吸血鬼ゴケミドロ」と順調にジャンル映画に転じていく佐藤友美がヒロイン。バリ美人でびびる(同年の「甘い秘密」が最高なんだけどね)。
安藤昇が出てるからか、彼に憧れ「任侠道」に進もうとするゴロ政の殴りこみは仁侠映画からの伝統。ラスタチですね。
葉山良二も日活の人なんで、この辺りのキャスティングはほんとね。切ない。
中島貞夫監督作はどこかローカリズムというか、地方から都会へ出てきた者のペーソスを感じさせる(東京者の監督が東映京都という都に放り込まれた、という精神的なね)。孤児の少女を助けようとする佐藤友美の婦警にゴロ政が、「お前にはわしらの気持ちは分からん。あんたが刑事やからや」と言い放つシーンは反権力というよりもあの時代、はっきりと経済的にも内面的にも階層社会であった事を示している。
でもこれって今も変わらないよなぁ。
登場する銃はほぼブローニングM1910(電着)だったんだが、観てたら欲しくなっちゃってやばい。
安藤昇だけサービスなのか、ガバメントでした(ホンモノ?持ちこんだ?)。
「まむしの兄弟」は作を重ねて行くとラスタチまでの流れが同じ曲線なので、続けて見ると飽きてしまうというのはある。脚本の高田宏治はわざとそんな感じにしてるんだと思うが、添え物映画でもあるから、しょうがないよね。