踊る猫

コントロールの踊る猫のレビュー・感想・評価

コントロール(2007年製作の映画)
3.7
汗まみれになって歌い踊るイアン・カーティスの姿が忘れられない。私は後追いでジョイ・ディヴィジョンに触れた身なので、どうしてもスタジオ盤をCDやサブスクで聴いてそのひんやりとした無機的な質感(と私は聴いている)に触れる回数が多くなるのだけれど、彼らは実に「熱い」パンクだったのだなと思った。そんなイアンの人となりに迫ったこの映画は、なるほど彼の繊細な側面を卒なく描いていると思う。文学青年(几帳面に作品をファイリングしている)であり、成功がもたらすプレッシャーに苦しみ、薬の副作用に苦しんでいた(かもしれない)、そんなイアンの姿が見えてくる。しかしその苦しみがもっと彼の肉声(厳密に言えば、彼を演じる俳優の演技)によって語られ、この映画の端正さを食い破るような膨らみを帯びていればと思った。わかりやすく言えば、彼の苦悩が何らかの形で言葉にされていないせいでイマイチわかりにくいところがないかなと思ったのだった。寡黙なイアンの内面を敢えてブラックボックスにしたかった、という狙いならそれはそれで頷けもするのだけれど。
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