ひこくろ

東京オリンピックのひこくろのレビュー・感想・評価

東京オリンピック(1965年製作の映画)
4.3
「俺が撮りたいのは記録映像じゃない。映画なんだ」とでも言わんばかりの市川崑の強い意志を感じた。
イメージ映像が多用されていたり、観客の姿がやたら映るのは有名だが、市川崑がやったのはそれだけじゃない。
画面を急にモノクロに変えたり、スローにしたり、ストップにしたり、背景を真っ黒にしたり、音を強調したり、BGMを入れたり、とかなりやりたい放題をやっている。
それでいて、競技の緊張感、ゴール前の攻防、記録を塗り替える興奮なんかは、しっかりと押さえている。

脱落者や最下位の選手の姿を映している辺りにも、監督のこだわりややさしさを感じた。
記録映像としての価値を残しながらも、自分が撮る意味だけは見失わない。
オリンピックという一大イベントを通して、「映画」を作り抜いた市川崑の心意気を尊敬する。
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