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質屋のHKのレビュー・感想・評価

質屋(1964年製作の映画)
3.9
シドニー・ルメット監督の初期の名作のひとつです。
ずいぶん昔に深夜TVで見たはずですが、今回観てみるとほぼ憶えていませんでした。

アウシュビッツで妻子を失い自分だけが生き延びた暗い過去を持つ主人公ソルは、孤独に質屋を営んでいますが、もはや信じられるのはお金だけ・・・。

地獄の体験を経て固く心を閉ざした主人公をロッド・スタイガーが演じ、ベルリン国際映画祭主演男優賞と英国アカデミー主演男優賞を受賞しています。
『夜の大捜査線』でアカデミー主演男優賞を受賞するのはこの2年後。

モノクロ映像の明暗のコントラストとサブリミナルカットなみに極端に短いフラッシュバックの積み重ねが印象的。
パケ写にもあるように質屋の照明で顔にできる金網の影が、主人公は今もまだアウシュビッツの牢獄に閉じ込められていることを物語っており、生ける屍のような主人公はアウシュビッツで既に死んでいるとも言えます。

終始暗く重い展開のため、同じく初期の名作である『十二人の怒れる男』や『未知への飛行』ほど万人受けはしないでしょう。このラストで主人公が救われたとする評もありますが・・・はたして・・・・

音楽担当はクインシー・ジョーンズ。
クインシーは依頼があった際、本編を見てあまりの完成度に音楽は不要だと依頼を断りかけたそうですが、考えが変わったらしく本作が初めて手掛けた映画音楽となりました。
あるシーンでは当時既にヒット曲だった“ソウル・ボサ・ノバ”(例の“オースティン・パワーズ”のテーマ曲) もラジオから流れています。
『夜の大捜査線』の主題歌が大ヒットするのはやはりこの2年後。

ソルを師と仰ぐ質屋のプエルトリコ系の店員に見覚えあり。もしやと思ったらやはり『ワイルド・バンチ』のエンジェル(ハイメ・サンチェス)でした。
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