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ソドムの市のHKのレビュー・感想・評価

ソドムの市(1975年製作の映画)
3.5
「カビリアの夜」「アポロンの地獄」などのピエル・パオロ・パゾリーニ監督によるイタリア映画。原作はマルキ・ド・サドの「ソドム百二十日あるいは淫蕩学校」。キャストはパオロ・ボナッチェッリ、ジョルジオ・カタルディなどなど

イタリアが連合国に降伏した後、残ったファシストたちが北部のソロという町に集まり、4人の権力者によって亡命政権を確立していた。彼らは町中から美男美女を無理やり徴収し、劣悪な環境で常軌を逸した生活を強要させる。果たして捕らえられた男女たちはどうなるのか。

なんともなりません。物語は絶望に直行する形であまり起伏などは無いに等しい。終始絶望的な展開なので好みのタイプなのかと思ったのですが、ちょっと度が過ぎるほどのエロ描写と大嫌いなスカトロ描写を投入しているため、はまることができなかったです。

物語の舞台となるのはどこかの古城の中で行われるのですが、周りにはそれを止めるような大人などの存在は一切排しており、それ故に現実味がなくファンタジーに近しいものを感じる。

物語的にも、淡々と拷問を続けるような形で本能的に寄せ付けないものを見せつけることで、視覚的に驚かせようという魂胆が丸見えの演出がてんこ盛りのため、ちょっとそこが浅はかでげんなりとしてしまったという気がする。

あくまでこの映画では監督のファシスト批判、権力者批判などの左翼的思想を根底としているために、敢えて逆説的にその悲惨さを露骨に見せることによって映画として面白いものを見せようとしたのは分かるのだが、如何せん見せ方の引き出しが今見てみるとちょっと低いように感じてしまった。

だが、上述したメッセージ性というものを生かすために、拷問シーンや刺激的なシーンも垂れ流すのみではなく、所々抑制の効いた演出で見せていくため、見る前に想定したよりかは不快感はなかった。それでもしんどかったが。

最後の最後の虐殺シーンも、望遠鏡の視点から静観するというようなあくまで虐待する側の上品な振舞を対比させることで、異常性を抑制することに成功しており、そこが素晴らしかった。日本だったら拷問される側視点で同情的にエモーショナルに描きそうですしね。

いずれにしても見れて良かったと思います。でも、ここまで露悪的な映画はちょっとタイプじゃないかも。救いのない映画は大好きなのですが、もうちょっとエログロに振り切れてないもののほうが好きかもしれませんね。
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