しんしん

マイマイ新子と千年の魔法のしんしんのレビュー・感想・評価

マイマイ新子と千年の魔法(2009年製作の映画)
4.3
片渕須直監督作

昭和30年の山口県防府市を舞台に、そこで住む新子と東京から引っ越して来る貴以子との交流を描きながら、新子が祖父から聞いた話を元に1000年前のその土地に居たであろう想像の少女(清少納言)とシンクロしていく。

「この世界の片隅に」と通じる圧倒的なまでの情報収集、時代研究に裏付けさられた描写はこの作品の持つこれまた「この世界の」と通じる人が生きること、生きていくことの普遍さを前向きに肯定するメッセージ性を最大限に活かした。

また、「マイマイ新子」における新子の現実を拡張していく想像力は「この世界の」における、すずさんの物書きに通じる。すずさんは途中で戦況の悪化によって好きだった絵描きをしなくなるが、彼女の見る世界はいつだって絵で書いたようにカラフルでそれが彼女を戦争から守る。そして片渕監督の次作「枕草子」では過酷な現実を前にして美しい詩だけを書き続けた清少納言を描いた作品になるそうだ。現実に対峙する手段としてのフィクションという片渕監督の一貫したテーマ性は、アニメーションがこの現実に示す効果と通じるのだろう。