しんしん

ゆれるのしんしんのレビュー・感想・評価

ゆれる(2006年製作の映画)
3.9
西川美和監督作

深田晃司と西川美和のプロットの形は非常に近い。ある事が起こり、主人公の状況がとことん悪い方向へ行く。そして地の底にまで落ちた最後の最後に残された精神から人間の本質を描き出す。

もし深田晃司が性悪説なら西川美和は性善説だろう。落ちに落ちたところで自分の誤ちに気がつき、最後の最後まで繋がっていた人物との絆を通して人間性を肯定するのが西川映画。落ちに落ちて、信じきっていた人間にも裏切られ、その果てに待ち受ける地獄のような結末を通して逆説的に最後にこびりついたように残る人間性を描き出すのが深田映画。

だから同じ橋から落ちるという事象でも、「ゆれる」では橋の上からの視点、「淵に立つ」では橋の下からの視点になるのだと思う。

あと、橋から落ちるというシーンにリアリティが無かったから、その後のあれやこれやの展開に切実さが演出されてなかったのがちょっと勿体ない。