しんしん

花束みたいな恋をしたのしんしんのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.0
土井裕泰監督作
坂元裕二脚本

2人が出会い、付き合って別れるまでの5年間の関係の変化を丁寧に描いた、恋愛についての映画、つまり純恋愛映画。

このくらいのバジェトの邦画で売れっ子の役者を起用する恋愛映画だとだいたい2人が付き合うまでの関係を過度に感傷的になるようなベタベタな演出の低クオリティな作品として量産されて、ミーハーに消費されて終わりっていうのが多い中、ちゃんとカップルが別れるまでを描いて、しかも映画作品として成立するクオリティで仕上げてきたことにまず拍手。

さすがに靴が同じ、鞄が同じ聞いてる曲も全部同じみたいなのはありえなさすぎるでしょ。普通ねカルチャーで繋がる場合って「え!それ知らなかった。でもめちゃくちゃいいじゃん!」みたいな感じで知らない領域が必ずあってそれを共有してく過程で関係が深まるもんなんだよ。だから、途中で麦くんが疲れてるのに絹ちゃんの名画座付き合って半分脳死してるシーンがあったけど、絶対それまでの過程で「それ俺の趣味じゃねぇわ」みたいなとこあったはずなのにちゃんとそれ描いてないあたりが純恋愛映画としてのクオリティが足りてないかなって部分。たしかに最後で「あれは引いたわ」っていう下りはあるんだけど、作品への見方とか読んでる小説のジャンルとかさ、そこれへんで違い見せて欲しかった。例えば麦くんが村上春樹好きで、絹ちゃんが「私は村上春樹嫌いよ」ってセリフ言ってくれたら納得したと思う。

あと2人ともカルチャーをファンションとして消費してる感じがした。いやキノコ帝国好きだけど、スチャダラッパー好きだけど、ゴールデンカムイ好きだけど、俺はキノコ帝国より七尾旅人の方が好きだし、断然RHYMESTER派だし、どうせあいつら押井守知ってても「劇場版パトレイバー1、2」見てねぇよ絶対。

とまぁ世代が若干被ってる僕がここまで楯突くくらいは作品として評価してるし思い入れもしてる。あと、ちゃんとやりたいことが出来てる作品だと思う。