しんしん

奇跡の丘のしんしんのレビュー・感想・評価

奇跡の丘(1964年製作の映画)
3.8
ピエールパオロパゾリーニ監督作

「マタイの福音書」の処女懐胎から復活までを余計なことをせずストレートなまでに映像化した作品。

階級性、君主制のローマ帝国に対峙するイエスという構図はパゾリーニの資本主義を批判するという一貫したテーマ性が強く反映されている。

同性愛者であり無神教であったパゾリーニだが彼の過去には深くキリスト教の存在があったため、この題材を選んだそうだ。イエスの博愛主義にはパゾリーニ自身の思想と呼応する所があったのだろう。

彼の映画の最も評価できる点は人物及び顔の捉え方だ。ネオリアリスモらしい演出で人々の素の表情や台詞外の表情まで丁寧に撮影しカットをさく。だから彼の映画にはリアリティがあり、生きた作品になるのだろう。