しんしん

アポロンの地獄のしんしんのレビュー・感想・評価

アポロンの地獄(1967年製作の映画)
3.9
パゾリーニ監督作

ギリシャ悲劇の最高傑作と名高い「オイデップス王」を原作に映像化した作品。

キリストの生涯を映画化した「奇跡の丘」と同じネオリアリスモ的なアプローチ。余計は演出はせず、淡々とストーリーが展開されていく。

最も注目するべきポイントは冒頭とラスト。パゾリーニの故郷のボローニャに視点が移動し、それが本編の物語と地続きな展開を見せる。つまりオイディップス王の悲劇がパゾリーニ自身の人生の象徴となって扱われていた。

現実のある事象を別の物語の事象に託して描き出すことで、その現実の事象の本質を鮮やかに浮かび上がらせる。「ソドムの市」のある事行為が資本主義社会への痛烈な批判だったり、「豚小屋」のある行為を受けた周囲の人々の反応であったり。パゾリーニはこの点で非常に優れた資質を持った監督だった。