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フローズン・リバーのkuuのレビュー・感想・評価

フローズン・リバー(2008年製作の映画)
3.8
『フローズン・リバー』
映倫区分G.
原題Frozen River.
製作年2008年。上映時間97分。

ニューヨーク州とカナダの国境にある川を舞台に、多額の報酬と引き換えに、不法入国者を手助けする白人女性とモホーク族女性の運命を描く米国ドラマ。
違法な密輸ビジネスにかかわる女性たちの実話をベースした作品っす。

ニューヨーク州最北部の町で暮らすレイは、新居購入のための資金を夫に持ち逃げされ、息子2人と路頭に迷っちまう。
支払いに追われるレイは、モホーク族の女性ライラと組んで不法入国斡旋のビジネスを開始。
それぞれ複雑な事情を抱える2人は、反発し合いながらもこのビジネスを続けていくが。。。

今作品は、2008年のサンダンス映画祭でグランプリに輝き、2009年アカデミー賞二部門 にノミネートされたほか、数々の映画祭受賞を重ねたそうです。
貧困大国とも評されてる、現代米国の厳しい現実をのぞかせた作品でもあるし、ドキュメンタリータッチで、米国社会の細部を的確に表現していることが評価されたんかな。
不法移民をテーマにした映画の多くは、メキシコ国境を舞台にしてるけど、今作品は、そないな設定の定型ななキャラや状況とは一味違う。
また、ネイティブアメリカンの領土では白人の法律は執行できないちゅう意味の曖昧さを探りながら、現代のネイティブ・アメリカンの生活を見ることができる貴重な作品なんちゃうかな。 ハントは、貧しい白人たちの生活様式にも鋭い目と耳を向けているし。
また、脚本も監督が書いており、彼女は米国のインディペンデント映画界でもっとも注目される一人となってます。
多文化共生社会なんて云われる米国も加奈陀(カナダ)も、現実には色んな問題を抱えている。
今作品では当初二人は反発し合うが、 貧困と子どもを持つ母親であることを共通項にパートナーになる。 
せや、結局は子どものために、無理な局面を招き入れ、危機に陥る。
最後にレイ(メリッサ・レオ)は人間としての生き方を問われ、激しく自問することになるねんなぁ。
彼女の夫は一度も登場しない。
それは、米国の悩める家族関係の一端を含ませてるんやろな。
国境の町の貧困にもグローバリゼーションの負の面が投影されているように感じました。
また、パキスタン人への偏見には『911』の後遺症を感じ取ることも可能やけど、一般的な米国人の単純な思考回路を物語ってる。
ライラ(ミスティ・アップハム)の方が平凡だが人間的であるとも云えるかな。
レイも子どもの前じゃ旦那のことを悪く云わへん。
長男にもギャンブルさえしなけりゃいい父ちゃんなのにと自分に言い聞かせるようにいっている。
家族の再生を願いながら、思い通りにいかへん現実の前で無力感に打ちひしがれている。  
それでも何とか出口を見つけなきゃならへん。
経済的に恵まれない米国の庶民のもがきが伝わってくるけど、ラストでほのかな希望の兆しが見えるとこに救いがあるかぁ。
kuu

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