カツマ

セラフィーヌの庭のカツマのレビュー・感想・評価

セラフィーヌの庭(2008年製作の映画)
3.3
偶然にも昨年のポンピドゥセンター展でセラフィーヌルイの『楽園の樹』を見ました。生命を直接焼き付けたかのような剥き出しの色彩。そこには美しさを凌駕した恐怖ともいうべき感情的爆発が表現されていた。そんな彼女の人生を描いた作品。真の芸術家は創作に命を込める。彼女もまた人生を絵画に賭した人だった。

セラフィーヌの家政婦時代から始まり、アンリルソーを高く評価したドイツ人画商ウーデとの出会い、そして精神の崩壊。光の射すことのない人生を燻んだ映像と共に再現した。ゴッホやルソーが引き合いに出されていたが、彼女もまた生前には正当に評価されてはいなかった。信仰を心の糧に崩れそうなバランスの中で破滅的な美を生み出した彼女は、果たして幸せだったのだろうか。芸術家は例え評価されなくても描き続けるしかない。そんな命を賭けた作品だからこそ、我々は心を動かされるのだろう。

芸術家の人生を知ることにより、絵画にまた命が吹き込まれたかのような気持ちになる。もしまたセラフィーヌの作品を見る機会があれば、きっと彼女の人生を、感情を、もう少し深いところまで探求できるだろう。それはこの作品を見て強く思ったことだった。
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