ろ

クルーレスのろのレビュー・感想・評価

クルーレス(1995年製作の映画)
5.0

「世の中はファッションばかりじゃない。ニュースを見ることもクールだぞ」

鼻の奥がツーンとした。
眼の奥がじんわり熱くなって、涙が落っこちそうになった。
ハイスクールの人気者シェールは、この映画を教えてくれた後輩の女の子あーやにそっくりだった。
4年ぶりの再会を果たしたようで、たまらなく胸がいっぱいになった。

はじめは、書道部っぽくない、明るくイマドキな雰囲気に「あの子、すぐ辞めちゃうかもね」なんて言っていた。
しかし彼女は辞めなかった。
それどころか一緒に過ごすうち、彼女の印象はみるみる変わっていった。

行きつけの美容室に月イチで通い、ブランドのリップを集めることが大好きな、とてもオシャレな女の子。
一方で戦闘機マニアの彼女が見せてくれたのは、ブルーインパルスの展示飛行の写真。
ミスチルの「終わりなき旅」は人生のテーマソングなんです、と歌詞が印刷されたポストカードにメッセージをくれた・・・

「クルーレス」の主人公シェールは、いかにもパーティーで羽目を外しそうなタイプに見える。だけど実際は、ドラッグもやらないし免許もないし男性経験もない。
だから仲間内の会話に入れなくてションボリすることもある。
赤いミニドレスにファー付きのガウンを着こなす彼女は一見取っ付きにくそうなのに、不思議と親近感が湧いてくる。

この映画の登場人物たちは変わっている。
みんなオシャレなティーンなのに、会話に散りばめられているのはなぜか、私たちオタク好みの映画ネタだ。
失恋した友人には「今から学校サボって食べ放題に行って、それからクリスチャン・スレイターの映画観ようよ!」
ショッピング中に「このジャケット着たらジェームズ・ディーンみたいになっちゃうかな?」
イチャつくときだって、「長靴下のピッピみたいな髪型だな」「あんたの帽子はフォレスト・ガンプじゃない。・・・ところで、長靴下のピッピって?」「メル・ギブソンがやってない役だよ」
仮免許の友人が運転するジープは大型トレーラーに追われ(「激突」)、気になる男の子からの連絡を受信した携帯電話はそびえ立つモノリス。(「2001年宇宙の旅」)
彼が私の部屋に遊びに来たわ!と舞い上がるも、トニー・カーティスファンの彼は無言で「スパルタカス」を見始める・・・。
「複雑すぎてツインピークス状態」というセリフを乱用したくなるぐらい楽しくて大笑いして、この映画を思い切りハグしたくなりました。

パッケージから青春ラブコメなんだろうと高を括っていたけれど、
あーやがこの映画を好きだって気持ち、すごくよく分かって伝わって、キューンと恋しくなった。
「クルーレス」の中に、あーやがいたんだね。
21歳の誕生日に彼女がくれたバースデーカードを読み返しながら、ちょっぴり切なくて泣きそうになる4月の夜です。



( ..)φ

「クルーレス」は私が生まれた1995年の作品。(今思えば、だから教えてくれたのかもしれない)
そのすぐ後に作られた「ブリジット・ジョーンズの日記」で使われた All by myself も流れるし(あの曲聴くとなぜか笑っちゃうの、ごめんねセリーヌ・ディオン)、クールガイの登場シーンでスローモーションになる演出、どこかで見たなと記憶を遡ったら「エイスグレード」。この映画のオマージュだったのかな?

あの頃はまだまだ駆け出しの映画フリークだった私。
おすすめ映画に、素晴らしき哉人生、ロシュフォールの恋人たち、きっとうまくいく、あたりを挙げていたと思うんだけど、今だったら何だろう。恋はデジャヴ、カラーオブハート、フランシスハかなぁ・・・。こんなふうに考えているだけで夜が更けていきそう。

(この映画には、テイラー・スイフトやカーリー・レイジェプセンなんだよなと思いつつ、エコスミスのcool kidsを聴いている)
ろ