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くじらとりのmazdaのレビュー・感想・評価

くじらとり(2001年製作の映画)
3.9
児童短編童話集「いやいや園」の中の1つでチューリップ保育園に通う星組の子達がくじらを捕まえにいくお話を宮崎駿がアニメ化した16分の短編映画。
子供の頃大好きだった本の3つにはいるほど好きだった物語がアニメーションになっているというだけですでに感動して、始まりの期待とわくわくがものすごかった。
短編なだけに他の駿作品で得られるようなメッセージ性ある深さはないけど、見ていて微笑ましくてクスッとさせる笑いがあって子供の時の感覚を楽しめるようなある意味大人の方がうける映画なのかもしれない。
絵本や紙芝居を見るようなみんなでオハナシを聞くような密集した小さなシアターで、周りの人みんながニコニコしながら見ているのがわかって、童心に返ってこの物語を楽しんでいるこのシアターの空間がなによりも好きだった。
くじらとりに行く時の船で唄う「ゾウとライオン丸」の唄は子供の頃は本に書かれた歌詞を勝手にメロディーにのせて作曲して友達と歌っていた記憶があったから、それがちゃんと1つの曲になってアニメで流れてるのがなんだかとても嬉しかった。
主人公のだだっ子しげるちゃんは小さい子クラスのバラ組だから勇敢な星組の仲間にはいれてもらえず「いやいやえん」としての物語はあまり進行しないので、この本が子供に教えようと語りかけているものの深さがこの映画では伝わらないのが残念。
この本に出てくる子達はこれでもかというくらい成長しないし学ばないおかげで、それを読むこちら側が本の中のあらゆる間違いに気づくことができて良し悪しの線引きができるという素晴らしい教えを描いた本なのでそれが映画にも伝わる要素があったらよかった。くじらとりの後の話でしげるちゃんがチューリップ保育園からいやいやえんに行くまでのお話がちゃんと作られていれば短編でも同様の深さを得れたと思う。
でも絵のやわらかいタッチの可愛さは大人の中にある子供心をくすぐるものになっていて、難しいことを考えずに単純に物語というものを好きだと感じさせてくれる素敵な映画です。
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