mazda

クルエラのmazdaのレビュー・感想・評価

クルエラ(2021年製作の映画)
4.6
101匹わんちゃんのヴィラン、クルエラ・ド・ビルの誕生秘話。
『ジョーカー』のようで、あれよりは明るく良い意味で軽いテンポ、『プラダを着た悪魔』のようであれよりは毒々しく刺激的。
コテコテの英国節、超パンク、とにかく圧倒されるモードなファッション。私の好きなもの全てが詰め込まれててとにかく最高だった。
何より私が物語に求める、魅力的なヴィランの全てをクリアしていて、ヴィランとして完成形で虜になった。

物語の中での悪役の存在意義が、カタルシスを感じるための道具のように描かれることがむかしから嫌いだった。
どんな訳があろうと認められる悪はないというのは大前提にあって、それでも悪役が生まれてきたときから悪だったように描かれたり、何か理由があってもその事が深掘りされない見せ方は好きじゃない。
どんな悪役にもほんの少しの良心があって、ただ天秤にかけた時、どうしても怒りが勝ち、誰かへの影響を考えるほどの余裕を失う。

悪人の話なのに作品としてあまり重くならないのは、クルエラのパフォーマー、ファッションアイコンとしてのセンスがずばぬけていることが大きい。
彼女を手伝う人々はその悪事理解したうえで、それでも彼女の発想とその世界観に引き込まれ、自らトラブルに巻き込まれにいく。ヴィランとしてこんなに魅力的な人がいるのかというくらい中毒性のある人物。

彼女の世界観は、ダミアンハーストっていうイギリス人アーティストの作品で、遠くでみると美しいステンドグラス、近くで見ると蝶の死骸でできてるっていう、あれを見た時の衝撃ににていた。美しいの定義を破壊する感じ。もう一度騙されたくなってしまう感じ。ゴミ収集車とか車の上に乗ってドレスを見せるとことか、演出がとにかく素晴らしかった。

考えなくても視覚的に楽しいし、考えると奥が深い、そういう意味ではファンタジー要素がないのに意外とディズニー感強い作品。
イギリスにもファッションの世界にも思い入れがありすぎて、ものすごく感傷的にさせられた。彼女のしぶとさ、諦めなさ、そのストイックさは美しくなくてもキラキラしてる。とにかく夢に溢れててlalalandと同じような涙がでてしまった。ただただかっこよかった。ラストのクルエラ・ド・ビルのテーマが頭に残り余韻がすごい。うっとりする。

最初エマストーンがヴィランは合わないだろ〜〜とか思ったのすみませんでした。これ以上ない敵役でした。ちょい役も含め、それぞれのキャラが本当に楽しい。
もっかい見てもいいなあ。個人的にはファーザー超えで今年暫定1位。見て楽しいと思える映画に出会えるのが幸せ。
mazda

mazda