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ルクス・エテルナ 永遠の光のmazdaのレビュー・感想・評価

3.9
疲れてる時に絶対見てはいけない映画を撮る監督といえばトリアーに並ぶくらい強烈な人。
映画の前に警告が出たけど、ポリゴンショックの数倍はある光の点滅に途中からスクリーンに何色が出ているのか、そこに人が映ってるのかどうかがわからなくなってくる。色彩感覚を失うかと思った。目の弱い人、映画頻繁に見ない人には間違いなくむかない、というか見てはならない。

好き嫌いはともかく『クライマックス』『エンターザボイド』『アレックス』どれもこれも斬新な映像や構成は内容以前にその作り方だけで見る者に疲労感を与えさせる。
『ルクスエテルナ』もまさにそうだった。光や色の使い方ももちろんそうだけど、画面を左右で分割して見せる方法が1番の理由だったと思う。
この人達が話しているその頃、こっちの部屋ではこういう風に物事が進行していると同時に流れを見せる。会話も両方同時におこなわれ、当然字幕も左右両方にでる。
話してることは大した内容ではない、普通に聞いてれば馬鹿だなあと思うような中身のなさなのに、状況を理解しよう、話を聞こうと無意識で見ることに必死になってしまう。

準備不足で打ち合わせがしっかりできていないスタジオでの映画撮影というストーリー、出てくる人はみんな身勝手で混乱していて殺伐とした雰囲気。
でもやっぱりそれは内容以上に混乱させる見せ方をするから実際よりもさらにカオスに感じる。
見ているものはこの現場にいる人と同じように嫌気がさしイライラして、ただただ疲れる。感じてほしいという投げかける距離感ではなく強制的に感じさせにくるような暴力的な見せ方。とんでもなくサディスティック、娯楽映画を極端にアンチするような作品だった。ただそれが一部の人にはたまらないと思う。ハマる人はとにかくハマる。

トリアー常連のシャルロットがギャスパー映画に出るというところにとても惹かれて見に行った。この人の倦怠感というか重い鬱々しさが独特な空気を作ってて、その世界観に毎回引き込まれる。脱がなくても何故かエロい。

ベアトリスの冒頭の映画の価値観を語るシーン激しく共感した。映画の見方はそれぞれだし、何も考えずただただ笑えるギャグ映画、ありがちな話でも泣けちゃう映画、見る人によって、はまるものも求めるものも違う。
でも価値観を変えられそうなくらいの衝撃を与えられたり考えさせられた時その感覚は快感になる。その感覚でいっぱいに満たされたくなる。考えずに見て感じた時の笑える泣けるのさらに奥のところで思考と感情が湧き上がり溢れそうになる感覚。中毒性があるもの。
ベアトリスは気狂っててとりあえず黙ってくれって感じだったけど、その映画に対して求めることはものすごく共感できた。

セットに入るまでの冒頭12分は全てベアトリスとシャルロットのアドリブらしいけど、プロデューサーの愚痴とか16歳の子のベッドシーンの話とか一体どこまで本当なのか好奇心がわいた。16歳の子の話はニンフォの時かなと勝手に思ってる。
この狂気な見せ方を感覚的に面白いと言えるかどうかそれが全て。いろんな名言を引用してたけど内容はあってないようなものだと思う。
体感重視で考えがどうこう言う話ではないのはわかるんだけど、もう少し宗教観について掘り下げてればもっとあがった。視覚的には疲れるけど何故か不思議な楽しさがあった、好き。

映画を見終わって劇場を出た時の闇から光へ抜け出したような幸福感、普通の世界に戻ってきたぞっていう爽快感、それら含めてこの映画の評価です。
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